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人類は遥か遠い昔から進化を続け、今に命を繋いできた。数百万年前のアフリカで暮らしていた初期のヒト科原人「ホモ・エレクトス」は樹の上で暮らす"猿人"から"ヒト"へと進化を遂げたことにより、サーベルタイガー、ハイエナの祖先、古代ライオンなど、現代よりも大型で獰猛な肉食動物が生息する地上での生活を余儀なくされた。狩猟道具も持っていなかった彼らは"生き残る"ために猛獣たちの食べ残しをあさる「スカベンジャー(腐肉食)」となり様々な進化を遂げてきた、と英「Daily Mail」紙が5日に伝えている。
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■死肉をあさる「スカベンジャー(腐肉食)」
現代でも多くの肉食動物が暮らすアフリカのサバンナでは、「食料」として屠殺(とさつ)された260万年前の動物の化石が発見されている。米・スミソニアン国立博物館の古人類学者ブリアナ・ポビナー博士はこれら化石の「骨」を調べたところ、同時期にアフリカに生息していた原人「ホモ・エレクトス」が骨から肉を切り離し、内側にある骨髄を採取するためシンプルな石のナイフと丸い石を使用していたこと突き止めたのだ。
しかしこの時代の原人は「槍」や「弓矢」のような狩猟道具を作る技術を持っていなかったのだが、どのようにして獲物を捕食していたのかだろうか――。ポビナー博士は「この時代の原人は狩猟を行なっていなかった」と主張する。
博士は中央ケニアでライオンや豹などの狩猟と捕食された動物を観察したところ、これらの動物はやわらかい肉や内臓を食べ、ほかの多くの肉は残されていた。捕食された1頭のシマウマからは約6,100カロリー分もの肉が残されており、これは成人男性が1日に必要とするエネルギーの3日分にもなるという。
"食べ残し"とはいえ十分すぎる量である。原人たちは猛獣たちが残した骨にこびりついたリブロースや栄養たっぷりの骨髄などを食べていたのだ。
絶滅してしまったサーベルタイガーなどはその大きな牙からさらに多くの肉を食べ残したであろうと考えられており、ポビナー博士はハイエナのように骨を砕いて食べる肉食動物が存在しなかったサバンナでホモ・エレクトスは十分な食料を得ていたはず、と語っている。
■残り物には福がある? 食べ残しを食べることで発展した人類
スカベンジャー(腐肉食)というと、ハイエナやハゲタカのように世の中の憎まれものであり、"卑しい"という印象を受けてしまうが、原人は肉食動物の食べ残しを得ることで、高タンパク・高カロリーの貴重な栄養素を獲得し、肉体的機能の増進だけでなく、脳をも発達させてきたのだった。
彼らは獲物を獲得するため様々な工夫を凝らし、群れを作り、協力関係を維持することでその行動範囲も広がったのだ。ヌーのような中規模の動物から絶滅した巨大ゾウなど、サバンナや森林地帯にいたるまで、原人は彼らが食べ残した「死体」を探し回り、あまり腐っていなかったものは何でも捕食してきたのだという。そして、小動物を狩猟したり、肉をさばくための石器を作り始め、さらに脳を発展させてきたのだ。
我々の祖先がどのように進化を遂げてきたのかは様々な分野で研究の対象となっているが、「ホモ・エレクトス」が変化する世界へ適応するためにスカベンジャーとなり生き残ってきたとしたら、それは我々現代人に渡された重要な進化のバトンであることは間違いない。
(文=遠野そら)