社会そのほか速
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これまでに構築したソーシャル・ビジネスモデルが、お金を稼いでいけるかたちにするためにはどうすればいいのか。
それを検討するツールが、「財務モデル」である。実際のお金の流れよりもシンプルなかたちにして、だいたいの動きを把握するための模型である。 「エクセル」を使って作成していく。
まず財務モデルのフォーマットをつくってみよう。
エクセルの縦軸の一番左端に、「収入」「支出」「粗利益」「本部コスト」「営業利益」という5つの項目をつくる。横軸には「月」を入れていく。
さっそく、数字を入れていこう。まずは「収入」だ。これは、売り上げのこと。前回の事業計画書で「いくらもらうのか?」を決めた。それをベースに計算していく。
たとえば、障害を持つ児童を預かるというソーシャル・ビジネスをするとしよう。
預けるのにかかる費用は、1時間あたりの1人500円(単価)。預かる時間は2時間で、1日あたり預かる人数は10人とする。1日の収入は…
500円×2時間×10人=1万円/日
これを、年中無休で1か月(30日)行えば、その月の収入は30万円になる(1万円/1日×30日)。
次に「支出」だ。これは、現場のスタッフに支払うお金が中心になる。
先ほどの例を引き続き使えば…、
スタッフの時給を800円としよう。1人のスタッフが2人の児童を預かるという仕組みであれば、10人預かる場合、5人のスタッフが必要である。そこで計算式は、
800円×2時間×スタッフ5人=8000円/日
これを収入と同じく1か月(30日)で見ると、24万円/月の支出となる。
となると、粗利益(収入-支出)は、6万円となる。
その下の「本部のコスト」とは、「本部」を維持するためにかかるお金である。たとえば、自分(経営者)の給与や、事務所の水道・光熱費、事務所を持たずにカフェなどで仕事をする場合はコーヒー代、月々のネット代……などがある。
さて、それが、たとえば、月々10万5000円だったとする。
すると、最初の月の営業利益は、マイナス4万5000円。赤字である。
こんな具合に、事業計画書に沿って財務モデルをつくっていくと、最初はだいたい赤字。「これじゃあ、成り立たないよ!」となる。でも、それは当たり前。ここからスタートである。
まず目指したいのが、脱赤字。1年半くらいで、なんとか損益分岐点に至る財務モデルをつくることだ。
そして、脱赤字となったら、売り上げに対する営業利益率10%を目指す。これが経験則的にソーシャル・ビジネスやNPOが事業としてきちんと継続していけるラインだからだ。収入が30万円なら、営業利益が3万円。そのためには、粗利益率が35~50%になる必要がある。
そこで、パワーポイントに戻ってビジネスモデルをあれやこれやと変えていくことになる。そして、変更するたびに財務モデルに反映させて、成り立つかをチェック。それでもダメならもう一度、ビジネスモデルを変えて……。このくりかえしである。
では、営業利益率10%の財務モデルにするにはどうすればいいのだろうか。
もっともシンプルに考えるならば、収入を増やすか、あるいは支出を減らすか、だ。
収入を増やすならば、追加で収入を得られる方法はないかを考えてみる。
たとえば、行政などからの補助金や、支援してくれる人や団体からの寄付などが可能かどうかを検討してみる。
第6回で取り上げた「準市場型」を活用する方法もある。これは、医療保険のように、サービスを受ける人が実際の費用の何割かを負担し、残りを「みんなのお金」がカバーしてくれるという仕組みだ。介護や障害者福祉などの福祉系の場合、このモデルを活用するケースが多い。自分のビジネスプランでこのかたちがとれないかを検討してみるといいだろう。
あるいは、費用の形態を複数にする方法もある。たとえば、会員制の形をとり、会員の場合、会費を払う分、1時間500円で利用できるが、会員以外は1時間1500円とする。こうすれば、一律1時間500円の時よりも収入が増える可能性がある。
一方の支出を減らす方法も、パワーポイントのビジネスモデルを見ながら、しっかり検討しよう。
僕の場合、最初は、「病児保育の施設で預かる」としていたが、「施設を持たずに、病児のいる家にスタッフが訪問する」という仕組みに変えたことで、支出をドンと減らすことができた。
そのほか、スタッフを「ボランティア」という形にする方法もある。
全員がプロである必要がない場合などは、この選択肢も可能である。ただし、ボランティアの場合、長期的に続けてもらうことがなかなか難しいため、マニュアルを整備するなどして、スタッフの頻繁な入れ替えに対応できる仕組み作りが必要だ。
こんな具合に、パワーポイントのビジネスモデルと、エクセルの財務モデルを見ながら、売り上げを増やせる方法、支出を減らせる方法をいろいろと考えていく。
それを根気よくつづけていくことで、営業利益率10%の財務モデルも決して不可能ではなくなっていくのだ。
僕の場合も、この作業でパワーポイントもエクセルも100回以上書き直した。それくらいしつこくやると、エクセルがもう手の延長みたいな感覚になり、事業構造が細部まできちんと把握でき、それが今後の経営判断の基礎を形作っていくのだ。