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◇ナ・リーグ マーリンズ5―7メッツ(2015年4月16日 ニューヨーク)
マーリンズのイチロー外野手(41)が16日(日本時間17日)、驚がくの「ニンジャ走塁」で沸かせた。メッツ戦で1点を追う7回1死で代打出場し、右中間三塁打。次打者の二ゴロで本塁へ突っ込み、捕手のタッチを2度かいくぐった。球審の判定はアウトだったが、5分44秒にも及んだビデオ判定の末、セーフに覆った。決死の同点生還も及ばず試合は敗れたが、メジャー現役最年長野手の41歳とは思えない身のこなしを披露した。
【写真】イチローはタッチをかわし生還 捕手がタッチに行く瞬間
イチローの「ニンジャ走塁」に試合が止まった。時間にして5分44秒。大リーグ機構が昨年、10億円以上を費やして構築したリプレーセンターでも「アウト」か「セーフ」か判別が難しいプレーを41歳が演じた。
1点を追う7回1死、代打で登場すると、低めのチェンジアップを強振し、右中間フェンスにワンバウンドで達する三塁打。続くゴードンの二ゴロは前進守備の正面に飛んだが、背番号51は「コンタクトでスタートだった」と「ゴロゴー」で本塁へ突っ込んだ。
タイミングは完全にアウト。ここで、イチローは「(打者走者を)二塁に行かせる、というスタンス」と瞬時の判断で三本間の真ん中で急停止した。ところが、送球が一塁側へそれると、再び加速。捕手のタッチをファウルゾーンへ回り込むようにかわし、倒れた姿勢から懸命に本塁へ手を伸ばした。捕手も2度目のタッチを試み、球審の判定はアウト。「(ノータッチの確信が)ありました」というイチローは「違う!違う!」ととっさに日本語で抗議した。
マ軍側のチャレンジ要求により、ビデオ判定に突入。5分44秒にも及んだビデオ判定の末、セーフに覆った。一時同点となる走塁に、ベンチのイチローの表情からも笑みがこぼれ、昨季盗塁王のゴードンは「アメージング(驚きだね)」と目を丸くした。
瞬時の判断と俊敏性、そして一度止まってから再び加速するパワー。イチローは「いやー、参りましたね。(止まった後は)力を利用できないからね。どんだけエネルギーいるの」と振り返り、一連の動きについては「ボルティモアのが近い」と、ヤンキース時代の12年10月8日のオリオールズ戦での「曲芸走塁」を引き合いに出した。
試合はその裏に勝ち越しを許し敗戦。チームは借金4と苦しい滑り出しとなったがイチローは「諦めたら絶対に無理だからね。気持ちが切れたら終わりだから」と言った。メジャー現役最年長野手の姿は若いチームを鼓舞するように映った。
▼メッツ・ダーノー捕手 正しい判定だった。私はタッチしていない。最初のタッチが触れたと思いアウトと宣告したんだろう。
≪イチローの曲芸走塁≫
☆八艘(はっそう)跳び マリナーズ時代の05年5月15日レッドソックス戦。4回1死一塁から右翼線二塁打で一塁から一気に本塁突入。タイミングは完全にアウトだったが、本塁手前でブレーキを踏み、その反動で捕手を跳び越えて左手でホームベースにタッチ。捕手ミラベリはボールを持つ右手ではなく、ミットをはめた左手での空タッチだったが、判定はアウト。
☆マトリックス ヤンキース時代の12年10月8日地区シリーズ第2戦オリオールズ戦。初回2死一塁から右翼線二塁打で一塁から本塁へ。タイミングはアウトも、手前で減速しファウルゾーンへ体をよじらせ、捕手ウィータースのタッチをかわす。本塁を通り過ぎたが急停止から反転、2度目のタッチもかいくぐり回り込みながら右手でホームベースに触れた。米メディアは「(映画)マトリックス」「サルサダンス」と絶賛。