イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」による日本人殺害脅迫事件で、犯行声明など一連のビデオ映像が投稿されたアラブ系サイトに注目が集まっている。「ジハード(聖戦)ファン」と呼ばれるイスラム国支援者らが集まるいわく付きの掲示板で、物騒な書き込みであふれかえっている。日本のサイトに例えると、「アラブ版の2ちゃんねる」(専門家)といい、イスラム国はこれを巧みに使ってプロパガンダ作戦を世界中に展開している。
フリージャーナリスト、後藤健二さん(47)らを拘束、殺害したとするビデオ映像の公開など、イスラム国が情報を発信する際、頻繁に利用するのが、「プラットホーム・メディア」というアラビア語の掲示板だ。
日本在住のエジプト人留学生は「『ジハード(聖戦)のメディアフォーラム』とも言われるサイトで、世界各地で起きるイスラム過激派のテロやイスラム国の活動について不特定多数の人がコメントし合う場となっている。イスラム国のメンバーが、自分たちの活動を宣伝することもある」と説明する。
サイト内は物騒な内容であふれ、ある投稿者は「敵の血と肉を見ることは書き表せないほどいい感じだ」と、包丁が刺さった首の写真をアップ。日本人殺害脅迫事件に関するものも多く書き込まれ、日本、ヨルダン両政府が後藤さんの解放のためにイスラム国との交渉に臨んでいた1月下旬には、事件をあおるような激しい内容もあった。
『サイバー・イスラーム』(山川出版社)の著者で中東研究センターの保坂修司副センター長は、「サイトに集まる連中は“ジハードファン”と呼ばれ、純粋なイスラム教の信者ではなく、過激思想に傾倒する一種の『ネット右翼』のような存在だ。サイトは日本でいえば、『2ちゃんねる』のようなもので、メディアとしての信頼性は低い」と解説する。
ヨルダン軍パイロットのモアズ・カサスベ中尉(26)が火あぶりにされる残酷な映像も一時、掲示された。
日を経るにつれ、残忍さが増すかのようなイスラム国だが、掲示板に書き込まれるジハードファンの過激な要望や願望に応えようと、行為をエスカレートさせている傾向もうかがえるという。
「イスラム国は不特定多数が閲覧する掲示板に自分たちの活動内容をアップすることで、域外からの戦闘員勧誘や寄付が有利になると考えている側面がある」(保坂氏)
テロを支える“舞台装置”にもなっている掲示板。極めて厄介な存在だ。