社会そのほか速
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安倍晋三首相が執念を燃やす、農業協同組合(農協)の改革案が2月にまとまった。全国農業協同組合中央会(JA全中)に対する最終的な落としどころは、販売部門である全国農業協同組合連合会(JA全農)の株式会社化と上場による「巨額の利益保証」だったようだ。
農林水産省出身の国会議員は「JA全中の萬歳章会長らは、内憂外患で改革をしなければならない現状は理解している」と断言する。これまでの政策変更により、農協は電機業界を中心とする企業の農業参入や減反廃止などに対応せざるを得ず、効率化のための策定を迫られている。
また農協は、JA全農を通さずに、インターネット通信販売やスーパーマーケットとの直接取引を行う生産者の増加という、頭の痛い問題も抱えている。売り場では「生産者からの手紙つきの野菜」として個人名が書かれたりするもので、「価格が多少高くても、味のよさや安全性や信頼性の高さを理由に購入する消費者が多い」(大手スーパー関係者)といい、JA全中やJA全農は全国の農家から対応策を求められている。
そういった厳しい現状で農協改革案を突きつけられただけに、萬歳会長らも受け入れざるを得ないわけだ。しかし、現場である農家は、今回の改革によって直接的かつ合理的なメリットを得られる見込みがない。地域の農協有力者らの反発は必至だ。
農業の現場の状況を把握し、水面下で根回しに動いてきたのは、世耕弘成内閣官房副長官ら与党幹部であり、財務省だった。「JA全農を株式会社にする」と訴え、その直接的なメリットとして「のちの上場益の保証」を説いて回った――というわけだ。関係者が明かす。
「世耕氏が議員になる前に勤務していたNTTは、1987年に上場し、額面5万円の一株の初値が160万円にもなった。資本金はNTTの7500億円に対し、全農の規模なら1兆円もあり得るため、この額なら100万円を出資する個人株主が100万人できる計算になります。世耕氏らは、こういった説明を各所で行いましたが、『100万円で買った全農株が、上場初日に3200万円になる』との説明には、反対していた人ですら顔色を変えたものです」
関係者によると、世耕氏や財務省は、JA全中専務理事を務めていた山田俊男参議院議員らを通じ、「さまざまな方法で、地域農業の代表者たちが全農株を持てるようになる」とも伝えたという。
まさに「地獄の沙汰も金次第」ということだろう。この懐柔策が功を奏し、今回の安倍政権による農協改革案は「JA全中が認めた」との印象を世間に与えた。すでに財務省などは、JA全農の株式会社化と上場時期、株の割り振り先について検討を始めているという。
(文=編集部)