社会そのほか速
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最近のニュースを見ていると、日本経済が良くなっているのか、悪くなっているのか、疑問に思う人もいるだろう。2014年度の企業の経常利益が過去最高に迫るレベルといわれる一方、同年度のGDP成長率はマイナスになる可能性も指摘されている。
【詳細図表はこちら】
3月2日に財務省より公表された14年10-12月期の法人企業統計では、経常利益は前年同期比11.6%増の18兆651億円と、比較可能な1954年4-6月期以降で最高だった。証券会社から、東証一部上場企業の15年3月期決算で経常利益が過去最高水準というレポートも出ている。
一方、9日に内閣府より公表された14年10-12月期のGDP第2次速報では、年率1.5%と、同4-6月期▲6.6%、同7-9月期▲2.6%の後で大きくリバウンドが期待されていたが伸び悩んだ。14年度はあと15年1-3月期を残すばかりだが、同年度の実質GDP成長率は大きく落ち込むことが確実だ。13年度と同じゼロ成長にするためには、15年1-3月の伸びは年率18%も必要になり、ゼロ成長も絶望的だ。仮に、1-3月期が年率2%成長であるとすれば、14年度の成長率は▲1%になる。
このように、企業関係の数字が良い一方、GDP関係は逆に悪い方向を示しているようにも受け止められるが、理由は、基本的に企業の経常利益とGDPでは性格が異なるからだ。企業の経常利益では海外からの所得を当然含むが、GDPは国内総生産なので、海外からの所得を含んでいない。
GDPに海外からの所得の純受取(所得受取から所得支払を差し引いた値)等を加味したものを国民所得(GNI)というが、これでみると、企業の経常利益と似た動きである。4-6月期▲4.0%、7-9月期▲2.0%、10-12月期6.0%と、GDPの動きより上向きであり、消費増税のダメージから回復しているのがわかる。
●日本経済は良くなっている?
企業の経常利益では、海外からの所得収入の割合が増えている。というのは、円安になったが、民主党政権時代を含めて過去数年にわたって円高であったために、企業防衛のために生産拠点を海外に移転した企業も少なくない。そうした企業では円安によって輸出増となるのではなく、海外投資収益の円換算額が急増している。パナソニックなどが製造拠点を国内に移す方針を打ち出しているが、この背景にはもちろん最近の円安があり、その効果が具体的に出てきたものだ。
パナソニックのほかにも、シャープ、ホンダ、TDK、ダイキン工業なども、これまでの中国などへの生産拠点展開を見直して、国内回帰になっている。具体的には、パナソニックは静岡県袋井市や神戸市の工場、シャープは栃木県矢板市や大阪府八尾市の工場、ホンダは熊本県大津町の工場、TDKは秋田県本荘市などの工場、ダイキン工業は滋賀県草津市の工場に、それぞれ移管するという。キヤノンも、海外拠点の撤退まではないといいながら、海外生産比率を減らして国内生産比率を高めるので、国内回帰の流れである。
こうした動きは、確実に国内の就業者数を増加させ、失業率を低下させる。経済の動きを見るとき、GDPや企業収益に目を奪われるが、実は就業者数を見るほうが経済の勢いを把握しやすい。就業者数が増加している場合は、経済が拡大基調である。15年1月の就業者数は6309万人。前年同月に比べ47万人の増加で、2カ月連続の増加となっており、日本経済は良くなっていると見てもいいだろう。
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)