社会そのほか速
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――人を殺した人と会う。死刑囚の実像に迫る
日本に現存する130人の死刑囚の中には、再審開始決定が出て釈放中の袴田巌や名張毒ぶどう酒事件の奥西勝をはじめ、冤罪を疑われている者が決して少なくない。筆者が過去に会った中では、小川和弘もその1人だ。
【大阪個室ビデオ店放火殺人事件/小川和弘の場合】
◆事件概略
2008年10月1日未明、大阪市の難波駅近くにある雑居ビル1階の個室ビデオ店が燃え、店内にいた客16人が死亡する惨事となった。小川(当時46)は火災時、客として同店に滞在。出火直後に白いタンクトップのような下着とトランクスという姿で店内を出入り口に向かって歩きながら、テレビがどうのこうのとぶつぶつ言っている不審な様子が目撃されている。
そこで臨場した警察官が追及したところ、小川は「すみません」「死にたかったんですわ」などと犯行を認めたような発言をしたため、任意同行。取り調べでほどなく個室でキャリーバッグに火をつけて放火したことを自白、殺人などの容疑で逮捕された。のちに裁判では無実を訴えたが、昨年3月、最高裁に上告を棄却され、死刑判決が確定している。
筆者が大阪拘置所で小川と面会したのは一昨年の9月初旬だった。小川は当時、最高裁に上告中。大阪地裁で受けた死刑判決がすでに控訴審でも追認され、まさに土俵際まで追い詰められていた。筆者はかねてよりこの事件に冤罪の疑いがあるという話を聞いており、時間に余裕ができたこの時期、遅ればせながら小川を取材してみたく思ったのだ。
裁判では、小川は現在の自分を惨めに思い、衝動的に自殺を思い立ち火をつけたと認定されているが、めぼしい有罪証拠は自白だけ。しかも現場の個室ビデオ店では、火災発生時に小川が滞在した18号室より、その近くにある9号室のほうがよく燃えており、火元は9号室だったのではないかという疑いが指摘されていた。
しかし小川との面会で、筆者は取材者としての未熟さを露呈する結果となった。
■報道と別人のようだった容貌
まず、恥ずかしながら筆者は小川が面会室に現れた時、彼だとすぐに分からなかった。というのも、マスコミ報道で見かけた逮捕当初の小川は、顔がやつれて血色が悪く、髪がぼさぼさで、いかにも生命力の弱そうな中年男に見えた。だが、この日の小川は顔がふっくらし、髪もすっきりと短く刈られ、精悍な顔つきの男になっていた。逮捕当初とはあまりに容貌が変わっていたため、筆者は目の前の小川を別人だと誤認し、何らかの手違いがあったのではないかと戸惑ってしまったのだ。…