社会そのほか速
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日曜の特番「ゴン中山&ザキヤマのキリトルTV」(テレビ朝日系)は各国のありもの映像を流し、スタジオにいるタレントの顔がワイプで映るというありきたりのバラエティーだったが、スポーツ映像の作りはおもしろかった。
試合でタイム中やプレーの合間に、コーチや選手が言葉を短く交わすところに注目した視点がいい。たとえば卓球の石川佳純がダブルスの試合中にパートナーに何事か言ってる映像を流し、直後に少しスロー再生したりして「思い切って!」と石川の口元にワイプを入れるようなこと。
野球ファンにたまらなかったのは、05年9月の阪神-中日戦、優勝を占う大一番で、ピンチを迎えた久保田に駆け寄り何事か言う岡田監督。もう一度、再生し、テロップを入れると、「もうエエよ。打たれてもエエから。オレが責任持つ」。
その後、久保田はまっすぐで2者連続三振。番組に出演した久保田が当時を振り返り、「(監督の一言で)吹っ切れた」というコメントを挿入したから、単なるタイム中のワンシーンでも深みが伝わった。
さらには、日本ハム稲葉の引退試合。クライマックスシリーズでソフトバンクに負けた瞬間に引退となったわけだが、ホークス胴上げの後、札幌ドームのファンに日ハムナインが挨拶すると、ホークスナインが稲葉に駆け寄り胴上げした。
実はこれには布石があった。12年に小久保が札幌ドームで引退した時、日ハムナインが小久保を胴上げしたことだ。その時、輪の中心にいた稲葉の口元をキリトリ再生すると、「よし!行こう! みんな!」と日ハムナインを誘導して小久保を胴上げしたのだ。
こういうふうに、絶対にわからなかったスポーツ選手の言葉を伝える企画はよかった。
しかし、司会のゴン中山はいただけない。サッカーの鹿島の中田浩二の引退試合後、同期の小笠原が泣いていた映像の後で、「(小笠原は)泣いてないって言うから、目から鼻水なんでしょうか」とつまらんギャグをかました。あれはいらないし、笑いを取ろうとする時につねに目をひん剥くのもやめてほしい。テレ朝は松岡修造に続く二匹目のドジョウ狙いでゴン推しなんだろうが、“熱血MC”は2人もいらない。
ありもののVTRを再編集しただけの安バラエティーでも、作り手に明快な視点があれば、観賞に堪えうる映像ができるという見本だ。
(作家・松野大介)