社会そのほか速
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桃香と冬馬は車に乗り込み、ふたりきりになった。
ハンドルを握りながら冬馬は黙り込み、桃香ははがゆいような複雑な気持ちになった。気分をまぎらわせようと歌を口ずさんだ。この前、カオル先生に褒められた恋の歌だ。慎吾が横目で見て笑った。
「こりゃいいや、ipodいらないな。便利だー。リクエストしたら何でも歌ってくれる?」
「ダメだよ。カーオーディオじゃないんだから」
「あのさ、もうじきクリスマスだろ。だから決心したんだ。自分の気持ちにケリつけるにはいい機会だ。クリスマスでもなけりゃ、こんなこと言えない」
「ケリつけるって?」
「慎吾とおまえが付き合ってるのかどうかよくわからない。だったら、お前らがあやふやなうちに言ってしまおうと思って。早いもの勝ちだ。桃香、俺とつきあってくれよ。慎吾じゃなくて俺と」
「冬馬…」
「言っただろ。高校ん時から思ってたって。あんときはいくじなしのガキだったから言えなかったけど、今なら自信ある。桃香を幸せにする。クリスマス、俺と会ってくれれば誰と過ごすより楽しい日にしてやる」
「ちょっとびっくり…」
桃香は頬が熱くなるのを感じた。日中は慎吾の動きにドキドキしていたくせに。女心は厄介だと感じた。
「慎吾と約束があるかなんて俺には関係ないから。もし慎吾と付き合うならはっきり断ってくれていいよ。潔くゆずる。スポーツマン精神にのっとって」
冬馬の言い方がおかしくて、桃香は急に力が抜けてリラックスした。フフっと笑いながら答えた。
「オリンピックみたい」
「そうだな。ちょっと俺、馬鹿だな」
冬馬がクシャっと笑った。緊張していた空気がスっとゆるんだ。
「遠回りしないか。夜景が見えるところに連れてってやるよ。俺のナンバーワン夜景スポット」
(続く)
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(二松まゆみ)