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この20年、私たちは見えないものも『かたち』と呼ぶようになった
西新宿にリビングデザインセンターOZONEがオープンしたのは1994年。ウェブブラウザーが登場、短期間に圧倒的なシェアを獲得したのと同じ年で、インターネット検索が日常になり始めたタイミングだったともいえる。それから20年、インターネットは私たちの生活に欠かせない存在となり、生活のあり方、人間関係、住まいとのかかわり方など多くのものを変えてきた。その20年を振り返り、今後の住まいとそれに関わるプロのあり方を考えるシンポジウム「住まいのかたちにプロは要るのか? ~住宅の価値をあらためて考える~」が行われた。ここではそのエッセンスをご紹介しよう。
シンポジウムはファシリテーターと3人の登壇者によるプレゼンテーションで始まった。最初のプレゼンテーションはファシリテーターでもある建築史家の倉方俊輔さんから。テーマはシンポジウムのタイトルである、住まいのかたち、そしてプロという存在について。倉方さんはそのいずれもがこの20年で大きく変容したという。
「今、私たちはたとえばシェアをデザインするなど、有形でないものについても『かたち』という言葉を使うようになっています。これは『かたち』という言葉の認識そのものが変化したことを示しています。かっこいい形が「建築」である、といったような理解は乗り越えられ始めているでしょう。では、これからの「建築らしさ」とはなにかということが問題になります。
もうひとつ、20年前には情報、ノウハウを持ったプロが明確に存在していました。しかし、今は分野によっては建築家よりも詳しいアマチュアがいるなど、情報、技術の進化がプロとアマの差を詰めてきている。その結果、見える形だけを作るのならアマでもできるのかもしれないという状況になってきています。また、当初デジタルは物事を平準化すると言われていましたが、実際には場所の特性が際立つようになるなど、微細な差異がクローズアップされるようになってきています。そうした状況下で住まいにプロは必要なのか、根源的な要不要も含め、考えたいと思います」。
ITの普及は社会も、住宅も、住み方に対する考え方をも変えつつある
『かたち』の変容については最後にプレゼンテーションをした日本版『WIRED』編集長の若林恵さんの話と重なる部分が多かったのが印象的だった。今回のシンポジウムの登壇者は倉方さんに始まり、HOME’S総研所長の島原万丈さん、建築家の松川昌平さんと建築、不動産の専門家だが、若林さんは未来に繋がるアイディア、イノベーション、テクノロジーなどを紹介するメディアの人で、言ってみれば異分野からの参加。…