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2014年も過去最高の生産量を更新し、好調の豆乳業界。その発展に大きく貢献しているのが、キッコーマン飲料が販売している調製豆乳や豆乳飲料シリーズだ。2015年2月23日には、新たにうめ味、白桃味に加えて、ジンジャーエール味の豆乳飲料を発売。特にジンジャーエール味は、ネットを中心に大きな話題となった。そこで今回、豆乳飲料シリーズを手掛けるキッコーマン飲料の大島秀隆氏にインタビューを実施。ユニークな豆乳飲料の開発秘話などをうかがった。
【焼きいもと豆乳の組み合わせは、確かに相性がピッタリ!】
●意外な組み合わせの豆乳飲料が誕生した理由
―― “豆乳+ジンジャーエール”という、予想外の組み合わせには驚きました。発売後のお客さんの反響はいかがですか?
大島 お口に合う、合わないなど、いろいろなご意見をいただきました。ただ、弊社としては豆乳を飲んだことがない方にも興味を持ってもらえるように、いろいろな味の新商品を販売していますので、まずは話題になってよかったと思っています。
―― 豆乳飲料シリーズには、ラムネ味やコーラ味がありましたが、ジンジャーエールもその流れで商品化されたのでしょうか?
大島 そうですね。我々は無炭酸シリーズと呼んでいますが、健康ラムネ、健康コーラに続く3つ目の商品になります。正直に申しますと、ジンジャーエールは社内でも否定的な意見もあったのですが、私は3つ目の商品を出すことに意味があると思っているので、最終的には押し切りました。本当は、“健康ジンジャーエール”にしたかったのですが、商品名があまりにも長くなるので、ジンジャーエールに落ち着きました。
―― 確かに健康ジンジャーエールだと、パッケージに収めるのは難しそうですね(笑)。炭酸飲料はほかにも種類がありますが、ジンジャーエールを選ばれた理由を教えてください。
大島 今回は、カロリーをグッとおさえようというテーマがありまして。辛口の本格的なジンジャーエールが流行っていたので、豆乳飲料でそれを再現するのがいいんじゃないかと思いました。ほかの商品は、だいたい100キロカロリーくらいあるのですが、ジンジャーエールは38キロカロリーまでおさえています。
―― 名前に入っていませんが、まさに“健康”というわけですね。そもそも、無炭酸シリーズはどのような経緯で誕生したのでしょうか?
大島 最初に誕生した健康ラムネは、男性にも夏場に豆乳をグビグビ飲んで欲しくて商品化しました。40代の男性をメインターゲットにして、清涼感のあるものを豆乳と組み合わせようとしたときに、ラムネなら味の想像がしやすいだろうと思ったんです。ただ、若い方はラムネというと駄菓子のイメージが強いみたいで、駄菓子のラムネの味がベースになっています。味に関しては賛否両論ありましたが、無炭酸なのに清涼感があるので、発売当時は話題になりましたね。
―― 話題になったので、健康コーラも販売されたんですね。
大島 2つ目の商品をどうしようか考えているときに、トクホ(特定保健用食品)のコーラが登場したんです。それで健康コーラを商品化することにしましたが、コーラは食物繊維の量にこだわって作りました。じつは、PETボトルのトクホのコーラよりも、200ミリリットルの健康コーラのほうが、食物繊維の量が多いんですよ。ノリのいい販売員のスタッフさんは、トクホコーラの上に健康コーラを陳列してアピールしてくれました(笑)。
―― 健康コーラのときも話題になりましたよね(笑)。とはいえ、豆乳飲料で清涼感を出すのには、苦労されたんじゃないですか?
大島 商品開発は若手の社員が担当したのですが、無炭酸なのに清涼感、シュワシュワした感じを出すのには、相当苦労していたと思います。私は企画担当なので、「シュワシュワ感が足りないよね」と、口を出すだけでしたが(笑)。特別なものは入っていないので、味を感じる順番を計算して作ってくれたのだと思います。
―― なるほど。では、うめや白桃はどのような経緯から商品化したのでしょうか?
大島 豆乳飲料にはフルーツフレーバーの商品が少なかったので、バリエーションを増やすのが課題でしたし、量販店のバイヤーさんから「旬に合わせて販売できるものがあるといいよね」というご要望をいただいていて。それで旬が感じられる、日本人の好きなフルーツで徹底的に攻めましょうということになり、ゆず、グレープフルーツ、巨峰、マンゴー、メロン、梨といったフルーツフレーバーの豆乳飲料を立て続けに作りました。ただ、日本人に馴染みのあるうめと白桃がなかったので、今回商品化することにしたんです。
●豆乳飲料は40種類! お客さんのアイデアから生まれた商品も
―― インタビューを行うにあたって、豆乳飲料シリーズについて調べてみたのですが、想像以上に種類があって驚きました。
大島 現在40種類の商品がありますからね(笑)。すでに販売終了した商品もあるので、実際はもっと多くの豆乳飲料がありました。
―― 豆乳飲料の種類は、いつぐらいか増え始めたのでしょうか?
大島 種類が増え始めたのは、2010年くらいからだったと記憶しています。秋冬の限定商品として、焼きいも味を出したところ、非常に好評だったので、いろいろな味の豆乳飲料を商品化することになったんです。
―― ジンジャーエールよりは、焼きいものほうが豆乳と相性がよさそうですが……。どうして商品化しようと思ったんですか?
大島 焼きいもは、私の実体験から生まれたんです。私は猫舌なので、焼きいもは冷たい飲み物といっしょに食べるのですが、たまたま豆乳と組み合わせてみたところ、想像以上に美味しくて。これはいけるんじゃないかと思っていたとき、原料メーカーさんがさつまいものペーストをすぐに持ってきてくれたんです。普通のさつまいもでもよかったのですが、ひねりがないので焼きいもにできませんかと相談したところ、翌週には遠赤外線で焼いた焼きいものペーストを準備してくれて。とんとん拍子に話が進んで、すぐに商品化できました。
―― 当時は画期的な商品だったんでしょうね。
大島 豆乳製品は健康飲料のイメージが強いので、そうかもしれません。味付けよりも配合する成分を強化したものが多くて、焼きいものようなスイーツ系のものは珍しかったと思います。こんな商品もあっていいんじゃないかと、軽い気持ちで商品化しましたが、想像以上に人気が出て驚きました。ただ、焼きいものイメージからか、9月~3月の販売時期に対して、12月頃から売り始めるので、9月~11月をカバーできる商品を作ることになりまして。秋と言えば栗ということで、翌年にはモンブラン味のマロンを販売し始めました。ちなみに、ストレートに栗だったり、和のイメージから栗きんとん味も考えたのですが、栗だけだとさみしいですし、栗きんとんは焼きいもに風味が近いので、若いスタッフのアイデアでモンブランの味になりました。
―― 焼きいもとマロンは、いまでも期間限定商品として登場していますよね。
大島 どちらも人気の商品ですね。豆乳業界は、基本的に季節に左右される商品は少ないのですが、寒い冬場はどうしても売り上げて落ちてしまいます。でも、9月~3月にかけて焼きいもやマロン、おしることいった旬を感じられる限定商品を販売したことで、売り上げをカバーできました。毎年楽しみにしてくださるファンの方もいて、3月末の販売終了時期には、「来年も出して欲しい」というメールをいただきます。
―― 焼きいもとマロン以外にもいろいろな味がありますが、これらの商品はどのような経緯で誕生したのでしょうか?
大島 ココアや抹茶、黒ごま、プリン、バニラアイスなどの商品は、お客様のご要望で商品化しています。例えば、黒ごまは調製豆乳を購入されているおばあちゃんのお孫さんから連絡をいただいたんです。「おばあちゃんが蜂蜜とすりつぶした黒ごまを調製豆乳に混ぜて飲んでいるんだけど、たいへんだから最初から黒ごま味があるとうれしい」って。それで商品化しました。
―― 黒ごまファンの方は、おばあちゃんとお孫さんに感謝しないといけませんね(笑)。
大島 プリンやバニラアイスなどは、乳アレルギーを持つお子さんの両親からのご要望で誕生しています。「牛乳が飲めないので、豆乳を飲ませたいのですが」というご相談のお電話から始まって、「一生、プリンやバニラアイスが食べられない」というので、それなら作りましょうということで。
―― フットワークが非常に軽いんですね。
大島 ご要望を出してくれる方は少ないかもしれませんが、それは氷山の一角で、潜在的なニーズはあるんじゃないかと思います。そこで、ご要望をいただき、商品化できるようなものはできるだけ作るようにしています。もちろん味にもこだわっていて、プリンはカラメルの味も感じられるようにしています。ストローは味と匂いを時間差で感じるものなので、その構造を逆手にとり、後味でカラメルを感じるように調整しているんですよ。
―― なるほど。続いてフルーツフレーバーについてお聞きしたいと思います。先ほど力を入れて増やしたと仰っていましたが、これだけ多くの種類があるのは壮観ですね。
大島 本来、フルーツフレーバーと豆乳の相性はあまりよくないのですが、大豆の匂いを抑えたり、逆に引き出す研究を続けていうちに、匂いをコントロールする技術が高まり、フルーツフレーバーと組み合わせてもおいしい豆乳飲料をつくることができるようになりました。とくに、ゆずやグレープフルーツといった、柑橘系の豆乳飲料が作れるようになったのは大きいですね。
―― 梨の飲料が通年飲めるのも珍しいと思いますが。
大島 ご指摘の通り、梨の飲料は季節限定のものが多いと思います。でも、私自身、梨の飲料が好きですし、通年あってもいいんじゃないかと考えて開発しました。時期外れに販売がスタートしたので、売れるか心配でしたが、多くの方に受け入れられたので、ホッとしましたね(笑)。
―― (笑)。残念ながら商品化されなかったものや、出しても売れなかったものなどありましたら、ぜひお聞きしたいです。
大島 商品化できなかったものは、新製品の企画を行うたびに出てきますね。とくに香りの弱い果物は、味が表現しづらくて。商品化に成功した梨も、昔からアイデア自体はあったのですが、なかなか実現できなくて。今後技術がさらに進歩すれば、梨のようにお蔵入りしていたフルーツフレーバーが商品化する可能性はあると思います。あと、商品化しても売れなかったもので印象に残っているのは、おやじに捧げるにんにく豆乳飲料ですね。
―― にんにく……。にんにくはインパクトがあるので、話題になりそうですけど。
大島 おやじに捧げるにんにく豆乳飲料は、展示会での人気はすごかったんですよ。そのときは「いける!」と思ったんですが。がんばる親父世代に向けて、無臭にんにくの粉末を使い、コーヒー風味に仕上げたんですが、やはりにんにくの匂いが残ってしまったようで。これは本当に売れなかったですね……。
●人気の豆乳飲料が判明! トップ5の商品をチェック
―― そうした失敗を乗り越えて、不動の人気を獲得されたのだと思いますが、トップ5の人気商品を教えてください。
大島 4位と5位は時期によっても変わるのですが、1位が定番の調製豆乳、2位は麦芽コーヒー、3位はおいしい無調整豆乳、4位は紅茶、5位はバナナになります。
―― それぞれ人気の秘密を教えていただけますか?
大島 1位は、35年くらい親しまれている看板商品で、最近は牛乳の代わりに調製豆乳を料理に使われる方も多いようです。2位も昔からの定番商品なんですが、昔、麦芽とコーヒーのどちらで人気になっているのか、社内で議論になりまして。それをはっきりさせるために、麦芽ココア味とコーヒー味を販売してみましたが、どちらも売れなくて……。麦芽コーヒーが好きな方にアンケートを実施してみたところ、麦芽コーヒー味だから飲むと答えてくれた方が多かったので、結局麦芽コーヒーのみが残りました。
―― 人気商品に、そんな過去が合ったんですね(笑)。
大島 そうなんです(笑)。続いて3位のおいしい無調整豆乳は、大豆の匂いを抑えて作った商品になります。これに味を付けたものが調製豆乳になりますが、おいしい無調整豆乳じゃないとダメというファンの方はいらっしゃいますね。調製豆乳よりも味が付いていないので、こちらを料理に使われる方もいらっしゃいます。
―― そして4位に紅茶、5位にバナナと続くと。
大島 はい。4位の紅茶は、本格的なロイヤルミルクティーを目指して作りました。アールグレイの香りも感じられ、完成度が高いと自負しています。販売当初は売れなかったのですが、口コミで人気が広がって、今では紅茶だけは購入するというヘビーユーザーのお客様も多くいらっしゃいます。また、5位のバナナは子どもから大人まで楽しめる味付けが、受けているのだと思います。
―― 5つの商品の中で、とくに印象に残っているものはありますか?
大島 この中ですと、味付けを決めるのに悩んだバナナですね。多くのバナナ飲料が販売されているので、弊社はどの味にするか、いろいろなバナナ飲料を飲んだり、スタッフと議論して考えました。多くの商品が数カ月で開発できているのに、バナナは商品化するまで長い期間をかけましたね。最終的に、我々がイメージするバナナ飲料の味を表現できました。バナナ開発のメインスタッフとは、いまでもこの仕事がいちばん大変だったと話しています(笑)。
―― 大島さんのお話を思い出しながら、バナナを味わってみます(笑)。お話は変わりますが、御社のホームページでは豆乳を使ったレシピも多く公開されていますよね。
大島 豆乳飲料は、そのまま飲んでいただいても美味しく召し上がっていただけますが、豆乳により親しんでもらいたいと思い、豆乳飲料を使ったレシピ開発を行って提案するようにしています。
―― 簡単に作れるもので、オススメのメニューなどはありますか?
大島 メニューというほどのものではありませんが、私がよく作るのは、豆乳飲料バニラアイスのソフトキャンディーです。ストローの差込口に割り箸をさして、冷凍庫で凍らせるだけで作れるのでお手軽です。また、ホットケーキを焼くとき、水の代わりに水と同じ量のいちごや抹茶、ココアの豆乳飲料を入れても美味しいですよ。いろいろな味のホットケーキミックスを買わなくてもいいですし、余っても飲めばいいので。そのほかのメニューに関しては、ぜひホームページをチェックしていただればと思います。
―― 本日は、インタビューにお答えいただき、ありがとうございました! 最後に、ファンの方にメッセージをお願いします。
大島 これからも美味しく、楽しくをモットーに、大豆の成分を手軽に摂取できて、皆様の健康に寄与するような新商品を生み出せるようにがんばります。今後も、応援よろしくお願いいたします。
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