東日本大震災では、物流網の寸断や工場被災で企業活動に大きな影響が出た。企業は教訓を生かし、非常時への備えを強化している。【神崎修一、山口知、和田憲二、鈴木一也】
　
　　セブン−イレブンを展開するセブン＆アイ・ホールディングスは昨年５月、埼玉県に燃料備蓄基地を設けた。東日本大震災では、深刻なガソリン不足が発生した。軽油やガソリン４００キロリットルを備蓄することで、大規模災害時も、首都圏の全店へ約１０日間、食料品や日用品を緊急配送できる。鈴木敏文会長兼最高経営責任者（ＣＥＯ）は「早く商品を届け、店を開けることがコンビニエンスストアの役目」と生活インフラとしての役割を強調する。
　
　　本社被災への備えも進む。イオンは昨年３月、愛知県小牧市の店舗内に、緊急時に本社機能を代替する拠点を開設した。テレビ会議用の設備などを備え、千葉市の本社が被災した場合、中部地方のグループ会社役員らがかけつけて指揮を執る。
　
　　被災時でも部品などを確保して生産を続けるためのサプライチェーン（部品供給網）対策も強化された。トヨタ自動車は約４０００品目の部品について、国内約１万３０００社、約３万拠点の生産情報を把握するシステムを震災後に構築し、改良してきた。
　
　　下請け企業は部品によっては１０次に及ぶ。東日本大震災では、直接取引がある１次下請けの情報は把握できていたが、「２次、３次となるにつれ難しくなり、把握に数日かかった」（トヨタ幹部）。どの企業がどこでどんな部品を作っているかをデータベース化し、ある下請け企業が被災しても、別の企業に代替部品を速やかに発注できる。日産自動車も同様のシステムを構築。東日本大震災級の災害でも数週間で生産が再開できるようになった。ホンダもデータベースを作ったほか、震災前より多くの企業に部品を発注し、リスク分散を図る。
　
　　金融機関同士の連携も進んでいる。金融機関が短期の資金を貸し借りする東京短期金融市場や東京証券市場、外国為替市場は昨年１２月、首都直下型地震を想定した合同訓練を実施。日銀や金融機関が参加し、決済システムが止まった場合に、代替のシステムに移す対応などを確認した。災害時には専用ウェブサイトやメールで被災状況を共有し、復旧対応を協議する。
　
　　◇「脱原発依存」姿なく　政府や電力、再稼働急ぐ　
　
　　東京電力福島第１原発事故で原子力政策の抜本的な見直しを迫られた政府と大手電力会社だが、最近は原発回帰の姿勢を鮮明にしている。…