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広島市の土砂災害の体験談集を発行した、元消防士の柳迫長三さん(左)と広島大大学院の海堀正博教授=18日、同市役所
74人が亡くなった昨年8月の広島市の土砂災害を後世に伝えるため、被災者144人の証言をまとめた「体験談集」が発行された。「玄関を突き破り土砂が流入してきていた。生まれて初めて死を意識した瞬間だった」「一瞬のうちに身体が流され柱にぶつかった。水が胸まで漬かった」。発生直後の混乱や懸命に逃げた様子が、生々しく記されている。
証言は、元消防士の柳迫長三さん(64)=同市安佐北区=らが被災地を回って集めた。柳迫さんは広島県内で32人の死者・行方不明者を出した1999年の土砂災害で救助活動に従事した。退職後は地元で防災を指導してきたが、多数の犠牲者を出す土砂崩れが再び発生し、自責の念に駆られた。「災害はまた起こる。どうしたら防げるのか」と思い悩み、「経験をきちんと伝えていかなければ」と証言を集めることにした。
体験談集では発生前後の様子について、「『地震かな』と思っていたら、壁とガラス戸が私と子供2人に倒れかかり、斜めになった壁を必死で支えた」(安佐南区の女性)、「妻が『焦げ臭い』と言い出した。(数分後)家に土砂が入ってきた」(安佐北区の男性)、「(車で逃げようとした際)大きな石が車に当たる。ドーン。車が大きく揺れる。暗くて周りが見えない」(同区の女性)など、緊迫した様子を伝える証言が続く。
「ベッドごと流され、九死に一生を得た」という安佐南区の女性は、「(避難は)自分で判断して早めに行動すべきだ。特に老人にとっては」と呼び掛ける。同区の男性は「どの部屋にも懐中電灯と履物を人数分用意しておくことが大事」と指摘した。
共著者の海堀正博・広島大大学院教授は「災害の状況が生々しく分かり、将来の防災に寄与するものだ」と話している。体験談集は地元の公民館や図書館に置かれる予定。