社会そのほか速
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食器を入れておけば自動で洗ってくれて、乾かすところまでやってくれる「食器乾燥機」。いまや当たり前のように使っている家庭は多いが、初めて日本の家庭用として売り出したのは半世紀以上前の1960年だ。
現在、家電各社をはじめ、多くのメーカーが食器乾燥機を販売しているが、中でも山善が販売する「食器乾燥機YD-180(LH)」は、1万円以上する製品が多いなか、小型化して約5000円という低価格化を実現した。独り暮らしや新婚夫婦といった少人数家庭に対応したものだ。この食器乾燥機だが、とんでもないところで大注目されている。
2013年11月頃、匿名掲示板に次のようなスレッドが立った。「【ワロタ】 Amazonの 山善 食器乾燥器のレビューが凄いと話題にwwwwwww」(原文ママ)というものだ。そのレビューの多くは、“プラモデルの塗装乾燥”のために使い勝手が良いというものであった。
手頃な価格やサイズに加えて、自然対流方式が採用されていることで、プラモデルなどの模型製作を趣味とする「モデラー」の人気を集めたのだ。自然対流方式とは、熱で自然に発生する対流によって熱風を循環させるものである。この方式、食器を乾燥させるにはいささか力不足の面が否めないのだが、無理に風を起こさないために模型塗装では塗装面にムラが出ないという利点があるのだ。早く乾燥させたくて乾燥機を使うとムラが出るが、自然乾燥では乾くまで時間がかかる……そんなモデラーのジレンマを解決してしまったというわけだ。
実は、モデラー用の模型乾燥機は存在する。しかし、これがなかなか高価なのだ。1〜2万円はする代物だ。モデラーとしては余計なお金は使わず、できるだけ模型購入に充てたいというのが心情だろう。なんといっても、エアブラシ(塗装用の道具)が高価だからといって霧吹きや園芸用の噴霧器を改造してしまうのが、コアなモデラーというものだ。まさに模型を乾燥させるように生まれたような商品があったら、飛び付くのも無理はない。
当然だが、本来は食器乾燥機として開発されたものだ。本体下部の発熱部分にプラモデルのパーツが落ちるとパーツが溶けることや、最悪の場合には発火する危険もある。山善は「本来の用途ではないので、火災や変形の危険性がある。本来の使途以外に使用して故障その他があった場合、無償修繕の保証対象外にもなり、弊社では責任を持てないのでやめてほしい」(同社家庭機器事業部)と“用途外使用”を禁じている。
とはいえ、初めてこの食器乾燥機でプラモデルを乾燥させた人は、何をきっかけに、そのようなことをしたのだろうか? ヒットのきっかけは意外なところに落ちているのかもしれない。
(ライター・里田実彦)