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「トキ全国公開案」佐渡は猛反発、他自治体は「ウチも観光資源にしたい」が本音だが…

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「トキ全国公開案」佐渡は猛反発、他自治体は「ウチも観光資源にしたい」が本音だが…

「トキ全国公開案」佐渡は猛反発、他自治体は「ウチも観光資源にしたい」が本音だが…

国の特別天然記念物に指定されているトキの公開をめぐって議論が起きている。環境省は石川や島根など全国にある飼育・繁殖施設で公開したいとして調整を進めている。しかし、トキの生息地として知られ、現在、国内で唯一トキを公開している新潟県佐渡市はこの方針に反発。格安航空(LCC)の普及や3月の北陸新幹線の開業などで交通アクセスが向上する中で、佐渡は他地域での公開による観光への影響を危惧する。「地方創生」が叫ばれる今、各自治体にはトキを観光資源として生かしたいという“深謀遠慮”が渦巻いている。

■観光業者「見たければ佐渡に」

 「トキを見たいということであれば佐渡に来ていただきたい」。佐渡市内の観光業界関係者はこう強調し、環境省の方針に明確に反対の姿勢を示す。それは佐渡にとってトキが重要な観光資源であることを意味している。佐渡と同様にトキの飼育や繁殖施設がある石川県や島根県出雲市が公開を目指して環境省に働きかけているが、それを認めることは「佐渡にとって打撃が大きく、時期尚早だ」と関係者は打ち明ける。

 佐渡の住民の中には、トキの保護活動に「島一丸」となって取り組んできたという強い自負もある。現在、各地で行われている「分散飼育」は容認するものの公開は認めない構えだ。

 佐渡市では「トキふれあいプラザ」で平成25年3月から全国で初めて公開を開始し、年間20万人近くが訪れる目玉施設となっている。佐渡市の甲斐元也(もとなり)市長は2月、会見の場で「各地で(トキが)公開されれば、佐渡に見に来ないことも考えられる」と全国での公開方針を危惧(きぐ)する。佐渡市議会も分散飼育の目的について「あくまでも絶滅の危機回避」としており、公開反対の意見書を可決している。

■環境省も佐渡に“気遣い”

 佐渡といえばトキを連想するほど、「トキの町」としてイメージが定着している。トキは昭和27年に国の特別天然記念物に指定され、その8年後には国際保護鳥にも選ばれている。

 新潟県は42年にトキ保護センターをつくり飼育するようになった。佐渡市によると、平成7年に日本産のトキの絶滅が確認されたが、中国から借り受けたトキの子孫が育ち、自然界と飼育下で計335羽(27年3月末時点)が生息しているという。

 佐渡ではこの間、住民有志らによる愛護会などを発足し、トキの生息環境の保全や観察を続けてきた。こうした理由から佐渡の人々にとってトキへの思い入れはひときわ強いのである。

 しかし、佐渡と同様にトキの飼育・繁殖に取り組む石川県や出雲市もトキを目玉として人を呼び込みたいという思惑がある。

 いしかわ動物園(能美市)に10羽がいる石川県は昨年9月、公開に向けた計画書案をつくった。市のトキ分散飼育センターで6羽を飼育する出雲市も今年度中の作成を目指す考えを明らかにしている。

■他地域での公開では「佐渡に配慮」

 環境省は26年8月、トキの野生復帰に向けた保護や増殖についての国民の理解を深めるため、佐渡以外の地域にある施設での公開に向けた指針をまとめた。これを見ると、環境省の佐渡への気遣いが見て取れる。

 公開にあたっては、佐渡市や地域住民などが行っている取り組みを紹介することや佐渡との人的交流、定期的な情報交換が条件として盛り込まれ、国の指針にもかかわらず佐渡の文字が散見される。

 計画書案を作成した石川県自然環境課の担当者は「トキの野生復帰や自然と共生する地域づくりを理解してもらうため、環境省の公開基準に基づいて(計画書案を)つくった。慌てて公開するというわけではない」と強調する。

 出雲市農業振興課も「(公開は)トキの保護や増殖という国家プロジェクトに貢献していることを知ってもらうため。市民レベルで保護活動に取り組んできた佐渡の(公開反対という)心情も理解できるので環境省や佐渡と調整しながら理解を求めていきたい」と配慮をみせる。

 その一方で「出雲でトキを公開することで佐渡で行われてきた取り組みを広く知ってもらうことができる。トキを活用した環境にやさしい町づくりを目指し、地域振興につなげていきたい」とも話し、できる限り早く公開したいとの意向も示した。

■佐渡でも「トキ以外のPRも必要」との声

 佐渡の中でも公開に賛成する声もある。環境省によると、1月下旬に全国での公開について市民向けに計10回のタウンミーティング(対話集会)を開いたが、強い反対意見はなかったという。

 「佐渡とき保護会」の土屋正起(まさおき)副会長(64)は「全国でトキを公開することで、佐渡に興味を持ってきてくれる人が増えるかもしれない。観光客の呼び込みにはプラスの効果があると思う」と全国での公開を歓迎する。

 環境省は平成20年から毎年トキの放鳥を行っており、近年は約30羽ずつ放鳥されている。その数は増加傾向にあり、土屋さんは「これからは野生のトキを本土でも見られるようになるかもしれない。そうなればトキだけに頼るわけにもいかなくなる。観光客を増やすには、能や和太鼓などトキ以外の観光資源をPRしていく必要がある」と話す。

 佐渡以外でトキを見られる日はいつ来るのだろうか。

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