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貴島誠一郎[TBSテレビ制作局担当局長/ドラマプロデューサー]
* * *
「凄いものを見てしまった!」…というのが正直な感想。
3月2日に開催された「鶴瓶のスジナシBLITZシアター」(3月2日~4日)のことである。この日のゲストは俳優の佐藤浩市さん。
今夜のお題の「繁華街のショーパブ楽屋」というワンセットで17分の即興ドラマを演じ、カット割された収録ドラマを見ながら進行役の中井美穂さんと三人で反省会トークするという、一夜限りの豪華な異種格闘技ともいえる舞台公演。
「鶴瓶のスジナシ」は名古屋のCBCテレビ制作の深夜番組として、昨年6月まで16年にわたって放送。今回の「劇場スジナシ」の模様は全国15の映画館にライブ・ビューイングとして生中継されました。
意外に思われる方も多いかもしれませんが、佐藤浩市さん、実は初めての舞台です。「ここまでやらなかったら意地ですね」と映像作品への出演を貫いていたきた浩市さんに、鶴瓶さんの熱烈ラブコールで門界の舞台が実現したと言います。
演技派でならす二人の筋書きのないドラマに、開演前の客席には張り詰めた緊張感が漂っていました。 今回はライブである舞台とテレビ的な生中継トーク番組の二本立て公演だったので、観客としてはワンカット長回しの即興劇の印象と、カット割されたドラマ・プレビューの印象が全く違いました。
俳優・笑福亭鶴瓶は舞台を上下(かみしも)に広く使い分け、肩の線で芝居をします。トーク番組「Aスタジオ」でセットを去る後ろ姿が好きです。もともと「スジナシ」自体が鶴瓶さんのホームです。 完全アウェイの浩市さんは演技プランの退路を断たれ、攻められる一方の印象でしたが、プレビューのカット割されたアップ映像では、鶴瓶さんのセリフに表情で多彩に反応しています。
実にいい笑顔をしたり、本気でムッとした表情も「絵になる」とはこのこと。表情を作る演技力が、映像に際立つ役者たる真骨頂を垣間見ました。浩市さんが咄嗟にくり出した「昔の芸名」では、ライブでは気が付かなかったかったビールを吹き出すのを懸命にこらえる鶴瓶さんのアップがありました。
2時間にわたった最高の芸達者同士の異種格闘技戦の勝負に、勝ち負けはありません。鶴瓶さんは全て終了のあと、あの後ろ姿で今夜の満足げに舞台を捌けて行きました。
浩市さんは楽屋で、
「スジナシって、本当に何も打ち合わせしないんですよ。この年齢で新しいことに挑戦できるのは嬉しいことです」
と言うと、旨そうにビールを飲み干しました。
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