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田舎への強い憧れ 里山でおもてなし

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田舎への強い憧れ 里山でおもてなし

田舎への強い憧れ 里山でおもてなし 

56歳の転職

 

 野上勝彦さん 58歳 NPO法人「里山倶楽部 富山」エリアマネジャー

  • レストランでエリアマネジャーとして働く野上さん(11月8日、富山市で)=細野登撮影
  •   「お久しぶりです」

      11月8日の正午を回った頃、富山市郊外の丘陵地帯にあるレストラン「キッチン里山倶楽部」で、野上勝彦さん(58)がなじみの女性グループや中年夫婦らを笑顔で出迎えた。

      窓外には田園風景が広がる。ランチに使う野菜の多くは、目の前の畑でスタッフが作った。2012年4月に開店し、その景色と健康的なメニューが評判を呼び、昨年度は1万2000人が来店した。

      野上さんは、店を運営するNPO法人「里山倶楽部 富山」(富山市)のエリアマネジャーだ。倶楽部では、地元の里山の保全活動や、市民農園の管理、収穫祭などの企画も行っており、野上さんは、その「仕掛け人」でもある。

     

      富山市の市街地で生まれ育ち、市内のホテルに勤めた。総務部長時代はリストラを任され、自分も02年に退職。翌年、1936年創業の市内の老舗宴会場「富山電気ビルデイング」に再就職した。

      宴会部門の支配人となり、「古い建物の重厚な雰囲気を生かそう」とインターネットで発信した。ブライダルフェアを企画し、年に数件だった披露宴を、2009年度に25件まで増やした。

      仕事は順調だったが、50歳を超え、田舎暮らしへの憧れが強くなった。10年から市民農園を借り、土の手触りや風の心地良さ、熟したトマトの味など、素朴な感動を味わううち、やがて「地産地消のオーベルジュを作りたい」と思うようになった。オーベルジュとは、宿泊機能付きのレストランだ。

      「好きにやりなよ」との家族の後押しもあり、11年に退職し、12年4月にレストラン「キッチン里山倶楽部」をオープンさせた。56歳。いつの間にか、会社勤めの同級生が定年を迎える年齢になっていた。

    ◇  ◇

     

    •   完熟トマトや取れたての葉野菜などを使い、美容や健康に敏感な女性層に受ける定食やオムライスなどを定番メニューにした。「女性の口コミは一番の味方」という狙いが奏功し、昨年度は2000万円を売り上げ、経営を軌道に乗せた。

        今春に膠原(こうげん)病を患い、2か月ほど入院した。その後は病気と付き合いながらの生活だが、レストランのほか、温泉や宿泊所もある自然体験施設でオーベルジュを始める計画は今も続いている。

        「忙しい日々でも元気に働けるのは、スローライフのおかげ」。ホテルや宴会場時代と変わらず、お客さんを里山でもてなすことが生きがいだ。(社会部 武田裕芸)

      農業始めた年齢 60歳以上6割超 農林水産省によると、2013年に新たに自営農業を始めた人は、60歳以上が2万5400人で全体の6割以上を占めた。40~50歳代は7600人、30歳代以下は7400人で、ともに約2割だった。
        1990年には60歳以上は約3割だったが、その後は増加し、2000年以降、60歳以上の割合が半分を下回った年はない。 同省は「定年をきっかけに、新たに農業を始めるケースが多い。特に、家業の農業をせずにいったん会社勤めをしたものの、定年後に改めて取り組もうと考える人が多いためではないか」と分析する。
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