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――灘の和田校長との共著「『開成×灘式』思春期男子を伸ばすコツ」を上梓されました。東西の私学の雄である両校の共通点、異なる点とは?
「教育で重要なことは、生徒の自主性を育てることで、そのために必要なことは生徒を信頼することです。生徒が何かにチャレンジしようとするときに、私たち教員は見守りはしますが、基本的に生徒にすべてをゆだねます。そこで困難な状況になり、生徒が求めてくれば、いろいろとアドバイスをする。そういう姿勢は、非常に似ていると思います。
私は、開成の中学生によくこう言います。「10年後、君たちには先生はいないのだよ」と。大学を卒業すると、常日頃、生き方を指導してくれる、学校の先生のような存在はいないわけですよ。教育の時期が終われば、もう自分でなんでも判断して行動しなければならない。そのための練習の時期が、中学高校時代なのです。そういうことを強く意識した教育を行っているのが開成であり、灘だと思うのです。
1クラスの生徒数が多いのも共通していますね。高校だと、灘は55名で、開成は50名。他の学校の方が聞くと、ぎょっとするような多さでしょう。
目に見えて違う点はありませんが、強いて言うならば出口の部分での生徒の選択の違いでしょうか。灘の場合は、医学部進学志向が強いと聞きますが、開成の場合は灘ほど強くはありません」
――灘の教育システムで参考になった点は?
「灘といえば、責任担任制ですよね。中学は1学年に4クラスあり、各教科の先生が中学1年生から高校3年生まで、そのまま上に持ち上がる制度です。学校の中に6つの独立国があるような雰囲気があり、教員の育成にも非常に寄与していると思います。灘が先鞭をつけたシステムです。
開成の場合も、ほぼこれと同じようなシステムがあるのですが、クラス担任の負担の大きさや役割分担の平準化などを考慮して、灘ほどは徹底させていません。ただ、英語や数学、国語といった積み重ねの教科では、その学年にどういう教科指導を行ったのか把握しておく必要がありますので、だれか一人は持ち上がるようにしています。
灘もそうでしょうが、開成でも各学年によって雰囲気がそれぞれ違います。担任教員としては、その学年のモラルのレベルをどのように維持していくかに腐心します。あまり厳しくし過ぎると自主性が育ちません。逆にたがを緩めすぎてもいけません。そこのバランスのとり方が、腕の見せどころでもあります」
――柳沢校長は開成のOBでもあります。在校時代に授業を受けた先生が、校長として赴任したときに、まだ在籍していたというエピソードには驚かされました。
「そこが私立校のよいところの一つです。その方は地学の先生で、私が高3のときに開成に着任され、初めて担当したのが私たちでした。そして先生の最後の1年間、私は校長として同じ学校に戻ってきました。こういうことは公立校ではないでしょうね。
このように自分たちが教わった教員が長く学校にいるので、卒業したあとも、よくOBが母校を訪ねてきますね。教員室に行くと必ず知った顔がいるので、訪ねやすいのでしょう。このようにOBが訪ねてくれることで、よい循環も生まれています。OBの動向がよくわかるので、彼らに頼んで『ようこそ先輩』という、OBの講演会を開催しています。OBのいまの仕事の話や、開成の在校当時の話などをしてもらい、生徒のキャリア形成に活かしています。生徒の関心も高く、今月の会では日曜日の開催にも関わらず約400人の生徒が参加し、話に聞き入っていました」
――よい先生の条件とは?
「基本的には二つの条件が必要だと思います。内容は担当教科によって、それぞれ違うわけですが、教科についての深い学問的な知識です。すべての教科に共通して大切な伝達力が二つ目です。自分が考えていることを、どうやって生徒の頭の中に伝えこむか。言葉であったり、ゼスチャーであったり、板書やスライド、プリントなど、いろいろな手段を使って、うまく生徒に伝えなくてはなりません。
さらに授業をマンネリ化させないことです。私は、先生というのは駅長型と運転士型の二つのタイプがあると思っています。たとえば、数学の先生が因数分解を教える場合、ベテランの先生だと、何回も何回も教えているわけです。
駅長型の先生の場合は駅に立ち、担当学年の列車が駅ホームに入ってきて、止まっている間だけ教えて、次の学年になり自分の目の前を通り過ぎて、ホームから出ていくのを見送るのが駅長型の先生です。
一方、運転士型の先生は、生徒と一緒に電車に乗って、教科を教えます。先生にとっては毎年同じことをしているだけかもしれませんが、生徒にとっては新しい体験なわけです。ですから、同じ電車に乗って生徒をよく見ることが肝要です。そうした生徒のために授業をマンネリ化させないことが大事だと思います。教えることは一緒でも、生徒は毎年違いますから」
生徒にとっては運転士型の先生が新鮮ですよね。開成の先生方は皆さん運転士型です。(続く、聞き手・構成 メディア局編集部 二居隆司)
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