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朝日新聞の記者有志が同社の内実をさらけ出した書籍「朝日新聞 日本型組織の崩壊」が話題です。誤報問題の原因になったといわれる同社の官僚主義的な社内体質が赤裸々に語られているのですが、別な視点でも注目を集めています。同社に関する詳しい経営指標が掲載されているからです。そこには、旧態依然の日本企業にありがちな、組織はガタガタといわれながらも、経営基盤だけは盤石というリアルな姿が見えてきます。
[写真]朝日新聞社の内実をさらけ出した書籍「朝日新聞 日本型組織の崩壊」
大手マスコミは非上場の会社が多いので、その経営実態はあまり外部には知られていませんが、一定の情報は外部に公開されています。本書では、こうした公開情報をもとにした、過去10年間の同社の財務状況が掲載されています。
朝日新聞の2014年3月期の売上高は約4400億円、新聞以外の事業も含めると4700億円に達します。売上高が5000億円規模ということになると、電力会社でも該当するところが出てきますから、サービス業の企業としてはかなり大きい部類に入ると考えてよいでしょう。同社の経常利益は約170億円となっており、経常利益率は約3.6%です。上場企業の平均的な経常利益率は5%弱といわれていますから、まずまずの水準です。しかも同社社員の平均年収は1300万円もあります。これだけの高給を払って、この利益率ですから、実はかなりの高収益企業と見ることも可能です。
新聞が斜陽産業と言われて久しいですが、当然のことながら同社の販売部数は低下する傾向にあります。10年前は824万部の発行部数がありましたが、現在は700万部を切っています。しかし、新聞は宅配制度を使って長期契約を結んでいる購読者が多いですから、急激に購読者が減る可能性は低いというのが現実です。誤報問題によってすぐに同社の経営が傾くといった状況ではないでしょう。
さらにいえば、同社には豊富な資産があり、財務状況はいたって健全です。総資産は6000億円近くありますが、このうち半分以上が純資産となっており、借金は実質的にゼロという状況です。また2000億円近い金額を運用に回しており、ここからの収益もあります。築地の東京本社に加え、有楽町マリオン、大阪の中之島フェスティバルタワーなど、収益性の高い優良不動産を多数保有しており、大手新聞社の中でも資産の内容はピカイチです。
同社の財務諸表を素直に読めば、日本の高齢化に合せて徐々に購読数が減るものの、採用を抑制したり、給与の見直しを行うことによって、当分の間、健全な経営が可能という判断になります。
これまで様々な企業が、体質の古さなどについて批判されてきました。しかし、組織に問題を抱えた風通しの悪い会社ほど、先行者メリットが大きく経営基盤が盤石だったりします。社会の新陳代謝が活発ではない日本の場合、その傾向は特に顕著です。本書が指摘するように、官僚的で硬直化した組織だというならば、ある意味で朝日新聞は日本社会の縮図なのかもしれません。
(The Capital Tribune Japan)
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