社会そのほか速
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今年のF1グランプリ初戦で最下位デビューを飾ってしまったマクラーレン・ホンダ。
この際だからハッキリ言わせてもらおう。メルボルンで見せた、あの「激遅」のパフォーマンスこそが今のホンダの実力なのだ。
メルセデス、フェラーリ、ルノーの3メーカーよりも約1年長い開発期間を確保したにもかかわらず、新型パワーユニットの開発は大幅に遅れ、十分なテストやデータの収集、基本的な信頼性の確保すらできないまま今回のデビュー戦を迎えたというのが、第4期ホンダF1活動の幕開けの厳しい現実なのである。
その結果、名門マクラーレンの足を引っ張り、アロンソとバトンというふたりの世界チャンピオンの今季を仮に棒に振ってしまったら…。その責任の重さを、ホンダはきちんと自覚する必要があるだろう。
もちろん、「F1に参戦する以上、頂点を目指すのは当然だ」という、ホンダの心意気は間違っていないと思う。
だが、ほんの1ヵ月ちょっと前までは、ホンダの新井康久氏(F1プロジェクト総責任者)が「メルセデスと対等に戦える自信がある」と公言していたことを忘れてはならない。あの自信はなんだったのか?
新井氏をはじめとするホンダのエンジニアたちが、開発プログラムの遅れや、それに伴う苦しい状況を自覚しながらも、外部に対しては見栄を張り、あえて「虚勢を張っていた」のならば(それはそれで本当にクダラナイことだと思うが)まだマシだ。
だが万が一、彼らが本気で自分たちの実力を過信し、開幕からメルセデスと対等に戦えると信じていたのだとしたら事態ははるかに深刻である。
F1で頂点を目指して戦うためには何よりもまず、自分たちの現時点での実力やライバルとの相対的な位置を正しく見極めることが重要だ。
楽観でも悲観でもなく、目の前の現実を冷静に把握し、そこから目標に至るために必要な工程をひとつずつ確実にクリアしていく以外に成功への道などないからである。
BARホンダ(後にホンダF1)として2000年から9シーズンを戦いながら、06年にバトンが挙げた1勝しかできなかった第3期ホンダF1活動の失敗も、その大きな原因のひとつがホンダの「過信」やそれに伴う見通しの甘さにあったことを当時、現場で取材していた筆者は目の当たりにしてきた。
しかも今回は1980年代の「第2期ホンダF1」で華々しい足跡を残したマクラーレンがパートナーであり、ふたりの世界チャンピオンを擁する、これ以上ない恵まれた体制だ。…