1月25日に実施されたギリシャの総選挙で、最大野党の急進左派連合が圧勝した。急進左派連合は、EUからの金融支援を受ける際に条件とされた財政緊縮策の見直しを公約に掲げており、あまりに厳しい財政緊縮への国民の不満を背景に、EU統合後、初めての反緊縮政権が誕生したことになる。
新政権は、今後EUやIMFと財政緊縮条件の緩和や債務免除に向けて交渉を進めることになるが、難航するだろうというのがもっぱらの見方。そのときギリシャは、どう行動するのか。
私はギリシャが最終的にユーロから離脱することになる可能性が十分あると考えている。それは、もともと通貨統合自体に大きな無理があったからだ。
通貨を統合すると、ドイツのように経済が強い国とギリシャのような弱い国がユーロという同じ通貨を使うことになる。為替市場では、当然のことながらドイツとギリシャの両方をにらんで為替が決まる。もしドイツが単独通貨を持っていたとしたら、ドイツの強大な輸出競争力によって、その通貨の為替は高くなってしまう。
ところがユーロにはギリシャがついているから、為替がさほど高くならない。これはドイツにとっては非常に有利だ。その為替安を利用して輸出を拡大できるからだ。
一方、ギリシャの立場からすると、本来よりも高い為替が継続するから、輸出が抑制され、景気は低迷する。そして、景気対策を打とうにも手段が限られてしまう。マクロの景気対策は2種類しかない。金融政策と財政政策だ、
通貨供給を拡大する金融政策をいまのギリシャは採れない。ユーロは欧州中央銀行が発行しており、ギリシャには権限がないからだ。財政政策を採ることはできるが、ギリシャは’12年に金融支援を受ける見返りとして、財政支出をGDP比で1.5%削減する約束をしていて、財政出動も実質的にできない状態に追い込まれているのだ。
こうした閉塞状況を打ち破る最後の手段がユーロ離脱だ。もしユーロを離脱すれば、ギリシャ国債は売りを浴びせられることになるが、それは自国通貨を増発して買い支えればよい。いまの日本がやっていることと基本的に同じだ。
私は、一刻も早くギリシャがユーロを離脱して、通貨をドラクマに戻したほうがよいと思う。そうすれば、為替が相当安くなるから、ギリシャの輸出は増加し、ギリシャ観光も増えることになる。
実は沖縄では、終戦から’58年までB円という米軍発行の軍票が使われていた。当初B円は、日本円と等価だったが、’50年に米軍が1B円=3円に通貨を切り上げた。米軍が自分たちの使える通貨の価値を高めたのだ。いきなり通貨価値を3倍に高められた沖縄は、本土への輸出競争力を失う。そのことが原因の一つになって、沖縄の経済が疲弊し、日本政府は沖縄経済振興のために莫大な財政投入をせざるを得なくなったのだ。
ギリシャにはオリーブなどの食料品だけでなく、フォリフォリなどのブランド品も存在する。何より観光地としては、世界有数のリゾートだ。だからドイツの抑圧から解放されて、自らの力で立ち上がることが、ギリシャ自身だけでなく世界経済の安定のためにも、最も必要なことなのだ。