ワンコインでがんの早期発見に結びつく画期的な医療技術がお目見えしそうだ。2018年にも1回につき100円程度で初期のがんを見つけられる装置が誕生するという。研究者を直撃し、その中身を聞いた。
九州大学は日立製作所との共同研究で、体長1ミリの線虫(せんちゅう)が、がん患者の尿に反応する習性を応用し、低コストで検査が可能な装置を開発する。
主任研究員を務める九州大・広津崇亮助教(42)によると、コストは1回につき100円程度。100匹程度の線虫を使い、1時間程度の診断時間でがんの有無が判別できるという。300例以上の実験を行い、「9割以上の確率で成功している。18年の実用化を目標にやっている」と自信をのぞかせた。
現時点では、がんの種類の判別までには至っていないが、「研究を進めればがんの種類の特定にも結びつく可能性がある。患者の尿さえあれば済むため、医療費の抑制にもつながるはずだ」と広津助教。早ければ来週にも文科省で会見を開き、これまでの研究成果を発表する予定だ。
現状の総合がん検診の費用は10万円以上するとあって、期待は高まるばかりだ。
【線虫】線形動物とも呼ばれる触手や手足を持たない動物。無色透明の細長い糸状で、おもに土壌や海中に生息する。人間や別の動物に寄生することもあり、小腸に寄生する回虫もこの一種とされる。採取や繁殖が容易で、生物学や分子生物学の研究では、しばしば実験動物として用いられる。