【SPORTS BAR】先々週のフェニックス・オープン(米アリゾナ州・TPCスコッツデール)、男子ゴルフの松山英樹はまさに快感の境地にいたであろう。
名物である16番のパー3(163ヤード)、ホールを囲むようにスタンドがあり、その収容人数は2万人…。ティーグラウンドに立つ選手に送られる声援は、通常のゴルフ場の静寂さはなく、アメリカン・フットボールや野球でのソレ。“ザ・スタジアム”と呼ばれるゆえんでもある。
3日目(1月31日)、その日は134ヤードと短めに設定されたピンをロフト50度のウエッジで打つとピン奥2メートルからスピンで戻り、あとわずかでホールインワン。「入らなくて残念だったけど、ファンを沸かせてよかった」。そこから4連続バーディーのフィニッシュだった。
この大会、毎年ギャラリー数が50万人超えで有名だが、今年は何と56万4368人。米ツアー史上最多を記録。“人は見られることで成長する”なんていわれるが、この大会も優勝争いして2位タイ。松山は成長し、すっかり米国になじんでいる気がした。
そういえば…。「マスターズ」(4月)もパトロンという名の“ギャラリー”で埋まる。月曜日から週末日曜日までマスターズ・ウイークと称してパトロンが詰めかけ、トーナメント期間中は連日5万人を超える大盛況である。
ちなみに、昨年の日本ツアーは? 22試合開催され、総ギャラリー数は38万6392人。フェニックスのひと開催にも及ばない。4日間トータルの最高は「中日クラウンズ」(5月)の4万403人。何とも寂しいシーンではないか。
松山は、今季国内ツアーメンバー登録せずに渡米した。昨年、国内では出場試合義務(年間5試合)を満たさない2試合止まり。今季も「スケジュール的に無理」とし、日本ゴルフツアー機構から課された罰金100万円を支払って、いわば“ケツをまくって”の米ツアー2年目だったが、まさに正解の極みである。
優勝賞金も100万ドル(約1億2000万円)以上あり、日本の最高4000万円とは大きな差がある。実力があり、こんな華やかな世界に身を置いて、しかも成長ができるなら米ツアー専念も当然かもしれない。
嗚呼…。ますます広がる日米ゴルフ格差よ。 (産経新聞特別記者・清水満)