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【ニッポン病院の実力】横浜市立大学先端医科学研究センター
京大の山中伸弥教授が開発したiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、国の施策として再生医療実現拠点ネットワーク事業が進められるなど、臨床応用に向けたさまざまな取り組みが行われている。しかし、iPS細胞で網膜や心筋膜のような組織の一部は再生できても、立体的な臓器を作り出すことは難しいとされてきた。
たとえば、肝臓は肝細胞だけでなく、別の細胞や血管などが入り組んでいるため、ひとつの細胞から分化して、立体的な臓器にするには複雑すぎる。ならば、胎児が肝臓をつくり出すように、肝臓の枠のような組織をつくり、そこから肝臓の細胞を生み出して立体化させてはどうか。この発想の転換により、2013年に世界で初めて横浜市立大学先端医科学研究センターが、iPS細胞による血管構造を持つ機能的なヒトの肝臓をつくり出すことに成功した。
同センターは、2008年、横浜市の中期計画により横浜市立大学附属病院に隣接して開設されて以来、イノベーションシステム整備事業など国家プロジェクトの一翼を担い、再生医療もそのひとつとなっている。
「私たちが開発した臓器の芽は、身体の内に移植することで、血管が生じて血液が流れるなど、肝臓としての機能を発揮する仕組みを持っています。マウスの実験では、それを確かめることができました。しかし、人間への臨床応用には、解決すべき課題はまだ多い」
こう話すのは、同センターの再生医学を牽引(けんいん)する横浜市立大学大学院医学研究科臓器再生医学の谷口英樹教授(51)。恩師の岩崎洋治筑波大学元教授(故人)の下、研修医時代から臓器移植と再生医療への道の研究を重ね、2002年に現職となってからも、その情熱は消えることがなかった。そして、同科の武部貴則准教授らと研究を進め、長い道のりを経て、世界初のiPS細胞によるヒトの肝臓創出を成功させたのである。
「マウスへ移植した肝臓の芽と比べて、患者さんへ臨床応用するには、大量の肝臓の芽が必要になります。品質管理や製造、移植操作技術、有効性など、準備するにはまだ時間がかかるのです。その第一歩として、昨年12月に細胞加工施設を設置しました」
谷口教授によれば、この施設では、iPS細胞による肝臓の芽を大量に作ることが可能になる。複数の細胞を同時に作り、連結させるシステムとしては、世界唯一の設備という。肝不全で移植を待つ人にとっては、臨床応用への期待は膨らむが、実用化への道のりはまだ遠い。
「私たちのゴールは、患者さんを治すことにあります。生体肝移植の代わりとなる治療法を開発して、患者さんを治したい。そのゴールにたどり着くには、ひとりの力では難しい。私が恩師の岩崎先生からバトンを渡されたように、私も次世代へバトンをつなぎ、患者さんを助ける方法を確実なものにしたいのです。歴史的な視野に立ち、今後も開発に取り組みたいと思っています」と谷口教授。未来の医療の扉を開け、前進すべく奮闘中だ。 (安達純子)
【データ】※センターの国家プロジェクトへの参画状況
・イノベーションシステム整備事業(文科省)
・再生医療実現拠点ネットワークプログラム(科学技術振興機構)
・脳科学研究戦略推進プログラム(文科省)
・厚生労働科学研究委託事業(厚労省)
・次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラム(文科省)
・戦略的研究シーズ育成事業(神奈川科学技術アカデミー)
〔住所〕〒236-0004 神奈川県横浜市金沢区福浦3の9 (電)045・787・25272015/3/17 16:56 更新