社会そのほか速
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深夜、店を営む郷右近(ごううこん)富貴子さん(38)がカウンターで伝統弦楽器「トンコリ」を奏で、隣から姉の下倉絵美さん(40)が「ウポポ」(歌)を重ねると、店内を温かな空気が包んだ。
湖畔のコタン(集落)に生まれた姉妹は母やフチ(おばあさん)のウポポを聞いて育ち、フチの家で大人たちのウポポに合わせて踊る古式舞踊を習った。家庭を持ち、母となり、3年前に音楽活動を始めた。子供たちのためにも「アイヌ文化を知ってもらいたい」との思いからだ。子を育てる母親の覚悟が込められた「カピウウポポ」を全国の公演で欠かさずに歌う。
国がアイヌを先住民族と認めたのは6年前。近代国家の形成過程でアイヌ文化は深刻な打撃を受け、アイヌ語も「極めて深刻」な危機言語になった。文化の復興は始まったばかりだ。
今年6月の閣議決定により、アイヌに関する初の国立施設が2020年度までにできる北海道白老町では今、若者が伝統儀礼やアイヌ語を学ぶ。荒田裕樹さん(28)は「自然の恵みへの感謝を忘れずに生きてきた先祖に学ぶことはたくさんある。アイヌとして胸を張って生きたい」と語った。
北海道新ひだか町で行われた先祖供養祭。子供たちはバッタの動きを模した伝統舞踊「バッタキウポポ」を生き生きと踊っていた。子供たちが所属する古式舞踊保存会「帯広カムイトウウポポ保存会」会長の酒井奈々子さん(63)は言った。「アイヌのことを学びたいという若者が増えるなんて、一昔前では考えられなかった。この子たちが、きっと、アイヌ文化を次の世代へと伝えてくれるはず」
写真と文 上甲 鉄