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SF大賞受賞作家・藤井太洋、21世紀のSFと電子書籍のあり方を語る

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SF大賞受賞作家・藤井太洋、21世紀のSFと電子書籍のあり方を語る

 SF大賞受賞作家・藤井太洋、21世紀のSFと電子書籍のあり方を語る

 2014年3月に「電子から紙への大跳躍(グレートリープ)」としてインタビューを行った藤井太洋氏の『オービタルクラウド』が、2月21日に第35回日本SF大賞(以下SF大賞)を受賞した。
 
  作家、評論家、書評家、そして一般からエントリーと、日本SF作家クラブ会員の投票によるノミネーションを経て、選考委員による討議会で各年度における最も優れた業績を選び出す『日本SF作家大賞』に、セルフパブリッシング出身の作家の作品が選ばれた歴史的な瞬間だった。改めて藤井氏に話を聞いた。
 
 ●SFが描きにくい時代への挑戦
 
 ―― SF大賞受賞おめでとうございます。
 
 藤井 有難うございます。小説を書き始めて3年でこんなに大きな賞を頂いたことを本当に嬉しく思います。前回のインタビューでもお話ししたように、3人称視点での初めての作品でしたからね(笑)。
 
 ―― ずばり受賞された理由はどこにあったと捉えていますか?
 
 藤井 本作を推薦頂いたSF作家の長谷敏司さんには「こういうヒーロー像は今までなかった」というコメントを頂いていますね。
 
  主人公の木村和海はもちろん、ライバルの白石蝶羽に至るまで、オービタルクラウドの登場人物は、正義感よりも自身のプロフェッショナリティに忠実なんです。「自らの仕事をいかに達成するか」に動機がある、いわば「お仕事小説」なんです。近未来SF小説としての強度もさることながら、純粋なエンターテインメントとしても評価頂いたのだと思います。
 
 ―― ヒーロー像ですか。確かに、科学者というわけでないのは新鮮だったのかもしれませんね。
 
 藤井 科学者が主人公の作品は、特に黄金期と言われる50年代から70年代にかけて、たくさんありましたからね。それでも、私が物語を書くときに目指しているのは、「あの時代のようなSFが今でも書けるということを証明したい」ということなんです。
 
  かつて、科学技術の進歩とそれがもたらす危機――例えば新幹線、大阪万博やアポロ計画そして公害や核問題のように――は、私たちの生活の中で目に見えて分かるものでした。SFも目の前にある未来に対する期待と同時に問題提起を行うものが沢山あったのです。
 
  宇宙ステーションが実現して、かつてSFが描いてきた状況が実際に生まれてしまった。そしてヒッグス粒子が見つかったとされますが、こちらは実感がわかないし、私たちとの関係も分かりにくい。ただ情報だけがあふれています。…

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