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県は6日、2015年度一般会計当初予算案を発表した。総額は前年度比3・3%増の5872億円で、過去10年間で最大の規模となった。景気回復や昨年4月の消費増税による大幅な税収増を見込み、南海トラフ巨大地震などの大規模災害に備える防災対策や道路網整備などの建設事業を強化。仁坂知事は「安全と安心、未来への投資を柱とした積極型の予算措置」と説明した。
■歳出
公共事業に充てる投資的経費は、前年度比5・7%増の1246億円。昨秋公表した避難困難地域を解消するためのハード対策に着手するほか、災害時の緊急輸送路となる高速道路や幹線道路の整備を加速させるため膨らんだ。今秋の紀の国わかやま国体の開催準備費を含む補助費も18・6%増の1262億円と、大きく伸びた。
一方、歳出の4分の1を占める人件費は、職員定数を65人削減したことにより、1・1%減の1406億円に抑制。扶助費は生活保護費が増すなど、10・2%増の164億円となった。借金の返済に充てる公債費は732億円で、0・9%の微増だった。
■歳入
景気回復の影響による法人2税(法人事業税、法人県民税)の伸びや、消費増税による地方消費税の増収を見込み、県税は11・7%増の926億円。国からの財源のうち、自由に使える地方交付税は1607億円で1・0%増。国が返済を肩代わりする臨時財政対策債の発行額は260億円と23・5%減った。
借金にあたる県債は、臨財債を含め899億円と、4・3%増。そのうち、高速道路整備などの公共事業にかかる通常債が19・8%増の499億円と5割以上を占め、退職者の増加に伴う退職手当債の発行も42・3%増の83億円となった。
■財政運営
公共投資を中心に大型の予算となったものの、人件費削減や事務事業の見直しなどを盛り込んだ新行財政改革推進プランが順調に推移。数年来、続いた財源不足は回避された。県が「自由に使える貯金」とする財政調整基金と県債管理基金は取り崩さず、残高は218億円のままで、11年度末時点で予測していた額を33億円上回る見通しだ。
一方で、歳入に占める県債依存度は昨年より0・1ポイント増え、15・3%に上る。15年度末の県債残高も2・9%増の1兆285億円と、初めて1兆円を超える見込みで、県民1人あたり101万円の借金を抱える計算になる。
仁坂知事は「常に節約を心がけながら、どういう事業ができるかを考えていかなければならない」と慎重な姿勢をみせた。
◇地域医療、在宅介護も配慮
3期目を迎えた仁坂知事の最初の予算編成は、これまでに引き続き、南海トラフ巨大地震など大規模災害に備える防災施策に積極投資する内容となった。
昨秋、津波避難困難地域の公表に併せて示した「命を守る」対策が実行段階に移り、堤防や防波堤の建設、公共施設の高台移設など今後おおむね10年間で460億円を投じる。大規模建築物の耐震化補助は改修工事が本格化するため前年度の6倍となる90億円を配分するなど手厚くした。
さらには、高齢化社会に対応するため、地域医療や在宅介護の体制強化にも目配せした。和歌山市などの都市再開発にも積極的に乗り出す方針を示すなど、防災以外の分野でも独自色を盛り込み、3期目にかける思いをうかがわせた。
ただ、財政の健全化をどう保つかが今後、問われてくる。
県が15年度にゼロと見込んだ収支不足額は、16年度は一転して41億円に上る見通し。10年間の時限措置として国が許可した「退職手当債」の条件緩和が終了するのが要因だ。退職者数は15年度をピークに減少する見通しだが、今後も当面、大量退職は続き、予算を圧迫すると考えられる。
防災対策のハード整備は今後も多大な事業費を要し、高齢化に伴う社会保障費の増大も避けては通れない。引き続き行財政改革を推し進め、いっそう健全財政に努める必要がある。(田島武文)