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カプセルホテルといえば、上段・下段に分かれたユニットがずらっと並ぶスタイルを思い浮かべる人が多いだろう。そんなイメージとは一線を画すカプセルホテルが「ファーストキャビン」である。”進化型カプセルホテル”と呼びたくなるほどの画期的なサービスを一つひとつ紹介しよう。
「ファーストキャビン羽田空港ターミナル1」は店名通り、羽田空港第1旅客ターミナル内にある
二段式ではなく高さのあるキャビン式
そもそもカプセルホテルは法律上「簡易宿所」というカテゴリーで、カプセルは「個室」ではなく、おのおのの「ベッドスペース」という扱いとなる。つまり、「1室を多人数で共用する」形態だ。よって、各カプセルにはドアがなく鍵もかからない。
その意味で、「これは本当にカプセルホテルなのか? 」という施設が、今回紹介する「ファーストキャビン」である。筆者は”カプセルホテルの進化系”と捉えているが、二段ではなく上下の空間を確保し、通常のカプセルホテルのように屈(かが)むことなく自由に動ける「キャビン」を用意。”キャビン型ホテル”とも言えるが、あくまでも簡易宿所のカテゴリーなので、キャビンの仕切りには鍵は設けられていない。
二段ではなく上下の空間を確保したスタイル(写真は「ビジネスクラス」)
羽田空港到着フロア内に設置
ファーストキャビンは、東京の3店舗(秋葉原・羽田・築地)を中心に、京都、大阪、福岡にも展開するチェーン。ビジネスホテルとカプセルホテルの中間といった料金帯の”コンパクトホテル”ともいえる。”ファースト””キャビン”という名の通り、飛行機のファーストクラスがコンセプトで、客室として使用するキャビンは「ファーストクラス」「ビジネスクラス」の2クラス制。ホテル内には飛行機をモチーフにした様々なデザインが施されている。
今回は、ファーストキャビンの中でも異色な空港内店舗である「ファーストキャビン羽田空港ターミナル1」へ出向いてみた。羽田空港第1旅客ターミナル1F到着フロアに位置する”トランジットキャビンホテル”ともいえる形態である。
ホテル内には様々なところに飛行機をモチーフにしたデザインを使用
トランジットとは、特に飛行機の乗り継ぎで使われる表現だが、遅い時間の到着や早朝の出発に際して、空港内の宿泊施設はこの上なく利便性が高まる。そのためか、チェックイン可能時刻は19時~と遅め。とはいえ、筆者が到着した19時過ぎには既にレセプションにはチェックイン待ちの列ができていた。その後もロビーでしばらく観察していていたが、次から次へとゲストが到着、早い時間から盛況の様子がうかがえた。
スタイリッシュなロビーラウンジ
ロビーラウンジには、ゆったりくつろげるスペースのほか、ビジネスユーザーにも適した環境を整えている
スタイリッシュなインテリアが印象的なロビーラウンジをはじめとした共有施設には、大浴場やシャワーブース、パウダールームなど充実した内容だ。その他、キャビンは個室ではなく通常のカプセルホテル同様、音は厳禁ということで通話ブースもある。
一般的なカプセルホテルは男性専用という施設も多いが、ファーストキャビンは女性の利用も可能。女性専用スペースや、他店舗になるがロビー階から女性専用エレベーターが設けられた施設もあり、セキュリティー面もよく考えられている。
シャワーブース。なお、ホテル内には大浴場もある
パウダールームにはアメニティーも完備
ファーストとビジネスの優雅な空間
就寝スペースのキャビンは、前述の通り「ファーストクラス」「ビジネスクラス」の2クラス制で、ビジネスクラスは、専有面積2.2平方メートルに100cm幅のベッド、ファーストクラスは、同4.4平方メートルと通常のカプセルホテルの約4倍の広さの中に120cmのベッドを完備している。キャビンの定員はひとりで、各キャビンには鍵のかかるセーフティボックスが備え付けられている。
「ビジネスクラス」
「ファーストクラス」
「ファーストクラス」「ビジネスクラス」ともに、鍵付きセーフティボックスが付いている
なお、宿泊以外にも、5時~10時の間には早朝ショートステイが可能で、ファーストクラスは3時間単位、ビジネスクラスは1時間単位で利用できるプランもある。
筆者が利用したキャビンは空港ターミナルに面した位置だったらしく、耳をすませば空港ターミナルに響き渡るフライトアナウンスも聞こえてきて、まさに飛行機のファーストクラスで旅をしているような楽しい時間だった。これもまた、空港ターミナルに立地する「ファーストキャビン羽田空港ターミナル1」ならではの体験である。
※記事中の情報は2015年2月取材時のもの
筆者プロフィール: 瀧澤 信秋(たきざわ のぶあき)ホテル評論家、旅行作家。オールアバウト公式ホテルガイド、ホテル情報専門メディアホテラーズ編集長、日本旅行作家協会正会員。ホテル評論家として宿泊者・利用者の立場から徹底した現場取材によりホテルや旅館を評論し、ホテルや旅に関するエッセイなども多数発表。テレビやラジオへの出演や雑誌などへの寄稿・連載など多数手がけている。2014年は365日365泊、全て異なるホテルを利用するという企画も実践。著書に『365日365ホテル 上』(マガジンハウス)、『ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方』(光文社新書)などがある。
「ホテル評論家 瀧澤信秋 オフィシャルサイト」