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「我が国の食料自給率は39パーセント」これを聞いて全く焦りを感じない日本人はいないのではなかろうか。しかし別の計算方法では、自給率68パーセントという結果も出る。農水省は17日、「食料・農業・農村基本計画」の案をまとめたが、今後の自給率目標を50パーセントから45パーセントに引き下げる一方で、同じく70パーセントから73パーセントに引き上げるとした。これは一体どういうことなのだろうか。
目標を引き下げるのは“カロリーベース”の自給率のほう。これは「国民の消費カロリーをどの程度国産でまかなっているか」を示したもの。ここ数十年で日本の食生活は大きく変化し、肉類、油脂、小麦などを使用した欧米型のメニューが家庭でも増えている。その結果、カロリーの高い輸入食材が多く食べられ、カロリーベースの自給率を引き下げている。しかし昨今、飽食と言われる栄養過多の食事において、カロリーを基準にした自給率の算出にどれほどの意義があるのか。またこの計算法だと、外国産の飼料で育った畜産物は国産とは見なされない。このような問題点から農水省は、カロリーベースから“生産額ベース”へと自給率の主眼をシフトしつつある。生産額ベースの自給率とは、食料の国内消費仕向量における食料の国内生産額の割合を示したもの。今後はこちらの目標を引き上げ、自給率アップの目安として一層重視する方針だ。
これまで農水省は、カロリーベースでの自給率アップを目指して多額の補助金を農家への助成に充てたが、目立った成果はなし。そこで生産額ベースの自給率を強調し、カロリーが低くても高値で売れる野菜や果物などの生産を後押しして「稼ぐ農業」推進を謳い、自給率アップへの期待感を高めつつ予算獲得を保持するのが当面の狙い。しかし、今後は「68パーセント」という生産額ベースの数値だけが独り歩きし、せっかくいい意味で募ってきた国民の食糧自給率への危機感が再び鈍らされる懸念もある。
生産額ベースでも、我が国の自給率は先進諸国の中で決して高い水準ではない。ブッシュ元米大統領はかつて、「食料自給は国家安全保障の問題」であると述べた。食料自給ができないと国家の自立が脅かされるのみではない。多くの食料を輸入に頼る生活は、地球環境に少なからぬ負荷を与える。そして肉食中心の欧米型食生活が人体の健康を害することはすでに証明済みだ。地産地消で和食中心の食事を心掛けよう。そうすれば、自身の健康にも地元の農業にも、自然環境にも日本の将来にもメリットばかり、いいこと尽くめだ。(編集担当:久保田雄城)