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◇単価10年連続トップ「あまおう」、ネーミングも「うまい」
イチゴの高級化、大玉化が進んでいる。贈答用などとして人気を集める福岡県の「あまおう」の後を追うように、収穫量日本一の栃木県は今シーズン、新品種「スカイベリー」の本格出荷を開始。各産地も独自の品種を開発し、しのぎを削っている。背景には何があるのか。【田内隆弘】
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東京・新宿の果物専門店「新宿高野」。今月3日にイチゴの値段を調べてみたところ、あまおうが1粒200円なのに対し、スカイベリーは350円と大きくリードしていた。
スカイベリーの1箱(2パック入り)の値段は、粒の大きさや品質によって幅があるが2500円程度。ただ、入荷数はまだまだ少なく、栃木県以外で入手するのは難しい希少な品種となっている。
栃木県は「次世代エース候補」と位置付けるスカイベリーのPRに力を入れており、昨年12月には東京・代官山でイベントを開いた。高級でおしゃれなイメージのあるこの街を会場に選んだ理由は、購入ターゲットの30代女性の発信力。「自分へのご褒美」や「ママ友同士の交換」で食べた女性から口コミで評判が広がることに期待した。
栃木県の収穫量日本一は46年連続。その屋台骨を近年支えてきたのは「とちおとめ」だ。1996年に品種登録されると、しっかりとした果肉と日持ちの良さで瞬く間にトップシェアブランドに成長。いちご主産県協議会によると、昨季も全出荷量の32%を占めた。ただ消費者ニーズの多様化などにより、単価は下落傾向にあった。
一方、その単価で昨季まで10年連続トップなのが、福岡県が2005年に品種登録した「あまおう」だ。特徴である「赤い」「丸い」「大きい」「うまい」の頭文字を取ったネーミングも受け、高級ブランドとしての地位を確立。輸送技術の向上で、首都圏でも着実にシェアを広げている。
大玉のイチゴは農家の経営にとってもプラスだ。1パックに詰める数が減れば作業効率がよくなり、収益性が向上するからだ。「栃木でも、あまおうに対抗できる高級イチゴを」。そんな関係者の声に応えるようにスカイベリーは開発された。25グラム以上の粒の発生割合が67%(とちおとめは18%)と高く、甘みと酸味のバランスが取れてみずみずしい。栃木県農業試験場いちご研究所が、17年の歳月をかけ、10万株以上の中から選び抜いて開発。研究員は「新品種との出合いは巡り合わせ。運命です」と語り、思い入れは強い。栽培エリアについて、栃木県はとちおとめは県外でも認めてきたが、スカイベリーは許していない。福岡県があまおうで取った手法に沿ったもので、こうした流れは他県でも広がっている。
静岡県は昨年11月から、新品種「きらぴ香(か)」の試験販売を始めた。あまおうほど大玉ではないが、とがった形状とキラキラとした光沢が高級感を醸し出す。これまでの主力品種「紅ほっぺ」に比べて糖度が高く酸度が下がったことで、より甘みが感じられる。「紅ほっぺは他県での栽培を認めていたが、きらぴ香は県内限定で生産して品質を管理し、ブランド力を高めたい」と同県みかん園芸課。18年には県内生産の8割までを新品種に切り替えたい意向だ。
90年代半ばまで、全国のイチゴ市場は栃木県の「女峰(にょほう)」、福岡県の「とよのか」に二分されていた。しかし、静岡県の担当者は「どこでも同じものを作る時代は終わった」と言い切る。優れた品種を囲い込み、他県と差別化を図ることが求められている。
◇スカイベリー
11年に開発され、光沢のある鮮やかな赤橙(せきとう)色と整った円すい形が特徴。昨年11月、東京都中央卸売市場大田市場での初値は、最高級品に1パック2万円がついた。名前は4388件の応募の中から選ばれ、栃木、群馬県境にある日本百名山の皇海山(すかいさん)にちなんだ。