◇複数の専門医、男児が窒息状態になった可能性高いと鑑定
　
　　マッサージのような施術を受けた生後４カ月の男児が死亡した事件で、業務上過失致死容疑で逮捕された元ＮＰＯ法人理事長、姫川尚美容疑者（５７）＝新潟県上越市加賀町＝が男児をうつぶせにした状態で首を繰り返しもんだ疑いがあることが大阪府警への取材で分かった。複数の専門医がこの行為で男児が窒息状態になった可能性が高いと鑑定した。
　
　　姫川容疑者は「太ももの上でうつぶせにしたが、胸や腹を圧迫しないようにしていた。繰り返しもんではいない」と容疑を否認しているという。
　
　　逮捕容疑は昨年６月２日、大阪市淀川区のＮＰＯ法人事務所で生後４カ月の男児＝神戸市＝を、首の頸（けい）動脈付近を何度ももんで呼吸困難に陥らせ、低酸素脳症による多臓器不全のため６日後に死亡させたとされる。
　
　　捜査１課によると、鑑定を依頼した複数の専門医が「乳児をうつぶせの状態にすると胸や腹部が圧迫され、さらに首をもむことで呼吸運動が制限される。死亡した男児も同様に窒息状態に陥った可能性が高い」と結論付けた。姫川容疑者は首をひねることもあった。
　
　　男児は母親に付き添われ、姫川容疑者の施術を初めて受けた。大半の時間、男児はうつぶせにされていた。施術が始まって約４５分後に男児は意識を失い、ＮＰＯ法人スタッフが１１９番通報した。
　
　　一方、姫川容疑者が設立した上越市のＮＰＯ法人「子育て支援ひろばキッズスタディオン」は先月、解散した。【三上健太郎、村上正】
　
　　◇人気高まるベビーマッサージ、国も実態把握できず
　
　　乳幼児を対象にしたベビーマッサージの人気は高まっているが、規制はなく、国も実態を把握できていない。専門家は医学的知識に基づかないマッサージの危険性を指摘する。
　
　　「発育にいい」「健康にいい」などと宣伝し、個人経営のサロンや幼児教室でもベビーマッサージが盛んだ。
　
　　厚生労働省によると、国家資格「あん摩マッサージ指圧師」がなくても人にマッサージをすることはできる。姫川尚美容疑者も国家資格を持たないが、独自の施術を繰り返していたとされる。
　
　　トラブルを防ぐ動きもある。大阪府鍼灸（しんきゅう）マッサージ師会は今年１月、乳幼児への施術の注意点や身体への影響を写真付きでまとめた冊子を作った。会員向けの講習会も開いた。
　
　　群馬県済生会前橋病院の溝口史剛・小児科部長は「知識のない人の施術で子供が命を落としてはならない。国はベビーマッサージの実態を調べ、安全指針を作るべきだ」と訴えている。【三上健太郎、村上正】