社会そのほか速
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消費社会の成熟とともに製品やサービス、経営にまでデザインの重要度が増している。デザイナーに権限を集中させて莫大な利益を生み出す会社が市場で企業価値を高め、消費者に揺るぎない満足を還元する。米アップル、それを追随する中国の小米(シャオミ)――。「デザイン資本主義」とも呼べる新しい産業のうねりを追う。
アップルは昨年10~12月の3カ月間で企業として史上最高の2兆円以上の利益をたたき出した。いまや時価総額は90兆円近い。成功の陰で技術革新が止まったと批判されるが、強さを支えるデザイナーたちは水面下では動いている。
■全権を委譲
9日の腕時計型端末「アップルウオッチ」の発表会。「今度もただの素材じゃないよ」。ティム・クック最高経営責任者(CEO)は、完成品ではなく素材加工のビデオを続けて流した。トップデザイナー、ジョナサン・アイブ上級副社長の意向を反映した演出だ。
アップルウオッチは、創業者スティーブ・ジョブズ氏の死去以来、新しい物を作れないと批判されたクックCEOが初めて出す新分野の製品。これまでの製品にはない多様なラインアップが話題だが、注目すべきはその「バンド」だ。
開発者の一人が、繊維に近い曲がる素材を開発する「ソフトグッズ」チームを立ちあげたビリー・スミス氏。米アパレル、パタゴニア出身のウエットスーツの専門家だ。ナイキで肌に密着する超軽量シューズ開発を率いていたベン・シェイファー氏も引き抜いている。
網目状のステンレスや金合金など、新たな素材を見つけては製造法の実験まで繰り返すアップルにとって、今回の時計用バンドはその一つの用途でしかない。開発に入った電気自動車(EV)の内装、仮想現実感(VR)端末、ヘッドホンなど体に密着する様々な製品の登場を予期させる。
アップルの巨大組織は20人強の工業デザイナーとそれに続くエンジニアを頂点とする階層構造。ジョブズ氏の死後、クックCEOはまず、アイブ氏にハードだけでなくソフトも束ねる開発の全権を委譲しジョブズ氏が作った組織の原理を極端なまでに徹底させた。
優れたデザインは必ず模倣される。これを「下からの破壊」だとすれば、それを想定してアップルが編み出したのが「上からの破壊」モデルだ。デザイナーに権限を与え、デザインの力で逆に後発製品の陳腐化を狙う。