社会そのほか速
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東日本大震災発生から4年。当時は多くの映画が公開延期されたが、そのひとつ「唐山大地震」(10年、中国)が4年ぶりに公開となる。
76年に中国で実際に起きた唐山地震を舞台に、ある被災者一家の32年間を描いたフィクション。ガレキに挟まれた娘と息子。片方しか救えないから一人選べと迫られた母親の、壮絶なトラウマを主軸に据えた感動巨編だ。
11年3月26日に公開予定だったが、残酷描写が含まれる震災シーンはあまりに生々しく、今見ても延期はやむなしだ。さらに11日の震災当日に試写会が予定されていた九段会館では天井が落ち死者が出るなど、とことん運命に見放された。
製作費20億円の大作だが、08年の四川大地震における中共政府の不祥事から人民の目をそらすためのプロパガンダ映画だとの声も。人民解放軍を美化した演出はいかにもだが、名匠フォン・シャオガンによる人間賛歌のドラマ作りは号泣必至で、中国では歴代1位の大ヒットを記録した。
■3・11を風化させないために見る他3作品
「世界侵略:ロサンゼルス決戦」(11年、米)は異星人に破壊されたLAの街が東北とダブり、延期された軍事娯楽作。エキストラにまで本物の海兵隊員を使い、大真面目に異星人戦をシミュレート。この“異星人”を天災や敵国の暗喩だと考えると、社会派の本性が浮き彫りとなる問題作だ。
「4デイズ」(10年、米)は、自作の核爆弾を仕掛けた犯人を米当局がなりふり構わず拷問するショッキングな政治スリラー。原発が爆発炎上中の国で核テロの映画など公開できるはずもないが、作品自体は大傑作。衝撃のラストは米国では上映できずにカットされてしまい、日本公開版でのみ見られる事態に。
逆に公開を前倒しされ好評を博したのが「100,000年後の安全」(09年、デンマークほか)。放射性廃棄物の処理問題に特化した絶望のドキュメンタリーだ。政府が原発再稼働に邁進する今こそ見直し、あわせて4年前の大災害とその被害を忘れぬようにしたい。
(映画批評家・前田有一)