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千葉大学教育学部の学生が、グリーのエンジニアと教育アプリ制作に取り組んだ12月6、7日のハッカソン。
土曜の朝から日曜の夕方まで、学生とエンジニアが集中してデザインやプログラミングを続け、無事、各チームがゲームを完成させることができたように見える。午後3時過ぎには、出来上がったアプリを実際に動かし、歓声が上がっているチームもあった。
発表の午後4時まであと30分に迫り、記者がチームを取材しようとすると、グリーの社員から「エンジニアに『完成しましたね』とは言わないでください。彼らは時間ギリギリまで良いものを作ろうとしますから」と言われた。言葉通り、どのエンジニアも一心不乱にパソコンに向かい、プログラミングやバグのチェックに追われていた。学生たちはやや疲れた様子だが、メモを作ったり、発表用のパワーポイントの画面に直しを入れたりして、終了後の5分間のプレゼンテーションの用意に余念がない。
結局ゼロからのスタートとなった「お買い物チーム」は、当初「おつかい」だったゲームの内容を大幅に変更し、「迷宮計算―あなたは脱出できるか―」に落ち着いた。
「お買い物チーム」は、全員で粘り強く話し合い、ゲーム全体のテーマを「脱出ゲーム」に設定。計算をする動機に「パズルのような算数問題を解くと、パスワードとなる数字を手に入れることができ、数字を集めると迷宮から脱出できる」という要素を取り入れた。
同チームをサポートするエンジニアの月沢拓哉さん(27)は「当初はかなり不安だったが、きちんとエンディングまで動かせたのは収穫で、120点の出来。学生のデザイン力にも助けられた」と安堵(あんど)の表情を浮かべていた。
午後4時過ぎ、7チーム、各5分のプレゼンテーションが始まる。ユーモラスなアニメーションや、240種類もの問題を作ったとの発表に歓声が上がった一方、審査員から「ゲームをどのくらいやると、どのような知識がつくのか説明を」「小学5年生向けにしては簡単すぎるのでは」と厳しい指摘があったりした。
アプリの審査基準は、▽「アイデア」(独自性、新規性、優れた着眼点、発展可能性)▽「完成度」(実用性、ユーザビリティー、エンタテインメント性)▽「デザイン」(芸術性、優れた表現技法)▽テーマ性(テーマとの一致)▽教育効果(教育効果が高いか、小学校5年生が楽しく学べるものか)の5項目。審査員は、講義を担当した千葉大教育学部の藤川大祐教授(教育方法学)、グリーの藤本真樹・常務執行役員ら5人が務め、それぞれの項目について評価する。
審査の結果、優勝は、クイズを解きながら職業について学ぶ「少年探偵団」に決まった。「藤川大祐賞」に、新人客室乗務員になって各地の名物を知る「新人客室乗務員の世界一周旅行~ヨーロッパ編~」、「グリー賞」に「迷宮計算―あなたは脱出できるか―」がそれぞれ選ばれた。
藤本執行役員は審査後、「審査員によって、評価はばらついた。小学5年生に遊んでもらったら、全く違う結果になるかもしれない。1月の授業で実際に遊んでもらうまで、さらに良いものをつくってほしい」と激励した。
また、藤川教授は、次のように講評した。
「デザインはどこも持ち味を出してよいものができており、内容の勝負になった。大賞の『少年探偵団』は、ありがちな話ではあるけど、『13歳のハローワーク』(村上龍)を読み込み、大量(240問)の問題を作り、さらに学校の教科と関連付けているという点が高く評価でき、大賞にふさわしい」
さらに、藤川教授は、「企画書もさっぱり書けなかった学生たちだったが、アプリの企画段階でのグリーのエンジニアとのやりとりを通じて、エンジニアの本気さが伝わってきたのでしょう。それが学生たちを本気にさせてくれたのではないか。教育学部で学んでいく中で、今後この体験が役立ってくれればうれしい」と学生の成長を喜んだ。
一方、今回の受講生の小菅貴彦さん(2年)は、「実際、自分たちでアプリを作ることで、改めて、わかりやすく、面白く伝えるのにはどういった点が大事なのか実感できて、子どもに何かを教えていく上で、とても勉強になった」と充実した表情で振り返った。
来年1月20日には、千葉大付属小学校の5年生に、この日制作したアプリを体験してもらうカリキュラムも組まれている。
審査後、あるエンジニアの言葉が弾んだ。「残念ながら賞はとれなったけれど、子どもが遊んだら、間違いなくうちのアプリが一番面白いっすよ!」。子どもたちがどんな表情でiPadの画面に向かうのか、今から楽しみだ。
(おわり) (メディア局編集部 田代健一郎)