社会そのほか速
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ドイツで教師になるのを敬遠する大学生が増えている。
2000年代初めに騒がれた子どもの学力低下問題で、教師が批判にさらされたからだ。人気回復を図り、優秀な若い教師を確保しようと、教育界、教育行政を担う各州政府、産業界が対策に動き出した。
同国北部のシュターデ市。7月、中高一貫校「アセナウム・シュターデ」で、サマーセミナーが開かれ、昨年の「ドイツ教師賞」に輝いたデニス・ルダー教諭(36)が歴史の特別授業を行った。過激な排外主義思想を持つ「ネオナチ」の映像を流し、生徒18人に質問しながら授業を進めた。
過去と現在を関連づけた授業が評価されての受賞で、この日もナチス・ドイツの歴史に触れた。ルダー教諭は「生徒が授業に興味を持つよう心掛けている」と話す。
同賞は03年、国内の教師9万人で組織する「ドイツ文献学者連盟」などが教師の人気回復を狙って創設した。
同国の教師は67万人。かつては医師と並ぶ「聖職」として尊敬され、収入も安定していた。ところが、経済協力開発機構が00年に実施した国際学習到達度調査(PISA)の結果は日本より深刻で、ドイツは全分野で参加国平均点を下回った。シュレーダー首相(当時)が教師を「怠け者」と非難したこともあり、風当たりが強くなった。
こうした中、子どもが急増した1970年代に大量採用された教師が退職し始めた。旧東独地域はベテラン教師が多く、教師が不足する恐れが出てきた。教師の平均年齢が約50歳の州もあり、今年、全国から人材を集めるため、約1億4000万円にあたる宣伝費を予算化した。
企業約3000社が出資する「ドイツ学術振興財団」などが今年発表した調査では、大学進学を目指す成績優秀層の8割が教師を将来の職業に考えていなかった。同財団などは昨年、大学の教員養成を支援するため、奨励金を新設し、3校に贈った。
元大学教授で教育学者のクラウス・クレムさんは「子どもの学力を支える上で教師不足は避けなければ。特に旧東独地域は抜本的な対策が必要だ」と話している。(ベルリン支局 工藤武人)