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自治体が教員志望の学生らを対象に行う教師塾。その先駆けとなった東京都教委による「東京教師養成塾」は設置から10年を迎えた。
11月下旬、東京都教職員研修センターで、塾生約150人が好きな本を紹介する書評合戦「ビブリオバトル」に挑戦した。グループに分かれて本の魅力を説明し、一番読みたい本を決めた。東京学芸大4年、長尾春奈さん(21)は「話の組み立て方や伝え方が勉強になった。授業で取り入れれば、子どもたちの力がつきそう」と話した。
塾は実践的な教師力を育てる目的で、2004年4月に開設。大学4年生になった4月から翌年3月まで、週末に指導技術を学んだり、都内の小学校などで年間40日以上の教育実習を行ったりする。塾生は、5都県38大学の推薦を受けた学生のうち、筆記試験などで選抜された150人。今年度からこれまでの小学校コースに特別支援学校コースも加わった。
塾生は、夏の都内公立学校の教員採用試験で筆記試験を免除され、今年度の塾生のうち147人が面接に合格。来春採用されれば、受講料(18万7000円)も全額免除される。これまでの修了者の9割近くに上る約1200人が都内の小学校の教壇に立っている。
都教委は今年度、小学校教員を1104人採用し、競争倍率は4.5倍だった。教員の大量退職などで、採用者数は今後もしばらく1000人台で推移する予定で、倍率はピーク時の15.3倍(1996年度)より低くなる見込みだ。都教委の担当者は「優秀な教員を採用するために養成塾は必要」と話す。
教員生活10年目の1期生には、教員を育てる立場を目指す人も出てきた。杉並区立四宮小の主任教諭・菅野恭子さん(33)は今年度、都教委から教職大学院に派遣され、教員育成や学校運営を学んでいる。「養成塾で視野が広がり、実践力が培われた。子どもの可能性に気づき、その力を伸ばせるような教員を増やしたい」
教師塾は、都教委の開設後、全国に拡大した。「採用前の優秀な人材の囲い込み」との指摘もあるが、文部科学省は「地域の実情をふまえた質の高い人材を確保し、初任者の実践力を養うためにも有効な施策」とする。今後、各地の取り組みや効果を検証する考えだ。
文科省の調査によると、教師塾は昨年8月現在、全国67の都道府県・政令市教委のうち24教委が設置。東京都など10教委が、塾生について教員採用試験の一部を免除するなどの特別な選考を実施している。今年10月には茨城県教委も教師塾を始めた。「教育ルネサンス」では、教師塾による教員の囲い込み(2005年9月)や教師塾の工夫(09年1月)を紹介した。(桜木剛志)