社会そのほか速
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猫は喉から「ゴロゴロ」もしくは「グルグル」という音を鳴らします。動物の鳴き声としては少し変わっていますよね。このゴロゴロ音はネコ科特有のものでチーターなどの中型ネコ科動物も鳴らすことができますが、ライオンやトラなど唸ることができる大型ネコ科動物はゴロゴロ鳴らすのがうまくないようです。
ゴロゴロ音は基本的に機嫌が良い時に鳴らしているようでが、体調が悪い時や緊張している時にもゴロゴロいうことがあるので、何を意味しているのか非常に不思議です。そしてどこから鳴らしているのかも諸説あり、猫の謎の中でも非常に未解明な部分が多いのです。
なぜゴロゴロ鳴らすのか
猫は生後2日からゴロゴロ音を鳴らすようになります。新生猫が母親とコミュニケーションをとるために鳴らしていると考えられています。生まれたばかりの猫は視覚や聴覚が発達していませんので、母猫が子猫に近よる時にゴロゴロ鳴らし、子猫は振動として母親の存在を感知します。そして赤ちゃんがニコッと笑うのと同様に子猫は母親に「自分は元気だよ」とゴロゴロをお返しします。
成長とともにゴロゴロの意味は変わっていき、食べ物を要求するときや、挨拶のように使われます。猫がゴロゴロ鳴らしている時は穏やかな表情を浮かべることから、人間の微笑みに相当しているのではないかと考えられています。ゴロゴロが幅広く使われることを考えると、的を射た意見ではないでしょうか。
その一方、猫は怪我をした時、明らかに緊張している時、また死の直前にもゴロゴロと鳴らすこともあります。これはある種の多幸状態を表しているかもしれません。人間の末期患者でも、苦痛を和らげるために神経伝達物質エンドルフィンが大量に放出されます。エンドルフィンは脳内麻薬とも呼ばれることもあり、美味しいものを食べた時や性的に満足した時に分泌され、多幸感をもたらします。辛そうな時のゴロゴロはエンドルフィンなどの神経伝達物質が関係しているのではないかと考えられています。またゴロゴロの振動が痛みを軽減させたり治癒を促進させたりするのではないかという説もあります。
ゴロゴロの仕組みは解明されてない!?
これまでゴロゴロの仕組みを解明するために様々な研究がされました。最初、猫には解剖学的にゴロゴロ音発生器のような特別な構造があるのではないかと考えられましたが、そのようなものは見つかりませんでした。
そしてゴロゴロは通常の鳴き声と同時に鳴らすことができるため、ゴロゴロは喉とは別の場所から鳴っているのではないかと考えられ、血流説が生まれました。血流説とはゴロゴロは大きな血管の中で血が流れる振動音ではないかという仮説です。
しかし、筋肉の収縮を測定する筋電図により、ゴロゴロ鳴っているときは喉頭の筋肉が非常に細かく伸縮を繰り返していることが明らかになり、喉頭説が台当してきました。また、ゴロゴロ音は空気を吸う時と吐く時の間に一瞬止まることがわかりました。
それでも、喉頭説に確信が持てない理由としては、喉頭部分切除を受けた猫がゴロゴロを鳴らすことができたことが挙げられます。しかし、この猫は喉頭麻痺で通常の鳴き声を発することもゴロゴロも鳴らすこともできませんでしたが、喉頭部分切除を受けた後は回復し通常の鳴き声を発することができゴロゴロ音も再び鳴らすようになったと記録されています。
現在では、喉頭筋によって振動させられている声帯に空気が通るとゴロゴロ鳴るという説が有力で、個人的にも声帯とそれを震わせる筋肉が温存されていればゴロゴロは鳴らせるのではないかと思います。
まとめ
猫独特のコミュニケーションツールであるゴロゴロ。まだ視覚も聴覚も発達していない新生猫がゴロゴロでコミュニケーションをとっていたとは驚きです。
ゴロゴロを鳴らす理由としてはスマイル説とエンドルフィン説で多くの場合は説明がつくのではないでしょうか。ゴロゴロの発生メカニズムには多くの説がありましたが、現在では喉頭説がもっとも広く認められています。実際に声帯がどのような動きをしてゴロゴロ音が鳴っているのかは、さらなる研究により明らかになっていくでしょう。
参考文献
Frazer et al, 1991. How cat purr. J Zool , Lond 223:67-78
Feline Behavior A Guide for Veterinarians Second Edition
CAT SENSE The Feline Enigma Revealed
The Domestic Cat The biology of its behaviour Third Edition
■著者プロフィール
山本宗伸
職業は獣医師。猫の病院「Syu Syu CAT Clinic」で副院長として診療にあたっています。医学的な部分はもちろん、それ以外の猫に関する疑問にもわかりやすくお答えします。猫にまつわる身近な謎を掘り下げる猫ブログ「nekopedia」も時々更新。
国内では、“少子高齢化”と、それに伴い“空き家”や“空き地”がふえていることなども問題になっているが、香川県観音寺市では、そんな“空き家”を楽しんでしまおうというツアーを今年も企画している。
2014年に続き、NPO法人 スローシティプロジェクトの主催で今年も開催される『かんおんじ空き家めぐりツアー』は、「田舎暮らしに興味のある方や、空き家を使った町おこしに興味がある方々に、空き家物件の見学ツアーを通じて、“かんおんじの町”の魅力や人の温かさを体験してもらい、移住や町おこしのきっかけへつなげる」ことを目指して開催されるもの。
同ツアーでは、「観音寺市内にある空き家物件から魅力的な物件」を見学するだけでなく、地元食材を使った昼食が楽しめるほか、2014年のツアーをきっかけに移住した家族がセルフリノベーションした現場の見学も盛り込まれている。
香川県といえば、2011年には「うどん県として改名(架空の設定)」したり、2014年には特設サイト『新・時間旅行物語~恋するうどん県~』を開設するなど、その迷走ぶりと遊び心になにかと注目が集まる県。
そんなノリが県全体へ波及しているのかはわからないが、どちらかといえばネガティブなイメージを持たれることの多い“空き家”の見学をツアーにしてしまおうとは、中々面白い。
他の自治体でも同様の試みを行っているところは多く、実際にツアーから移住へつながった実績があるところもあることを考えれば、今現在、“空き家”や“空き地”問題に頭を抱えて手をこまねいているだけ、という自治体でも試してみる価値はあるだろう。
もしかしたら、これからは地方での“空き家”や“空き地”を楽しむツアーが一つのトレンドになるかもしれない。
『かんおんじ空き家めぐりツアー』は2015年3月21日(土)開催。参加費は昼食代込みで1,000円となっており、事前申込みが必要となっている。
■参照■
・NPO法人スローシティプロジェクト空き家バンク/かんおんじ空き家めぐりツアー
http://www.slowcity.jp/life/kanonjilife.htm
※この記事はガジェ通ウェブライターの「北島 要子」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?( http://j.mp/1Jq03eb )
-ガジェット通信
昨年12月、「ペヤングソースやきそば」の麺の部分にゴキブリが混入していたという投稿がTwitter上で拡散されて大騒動になりました。製造元のまるか食品は「混入した疑いがないとは言えない」とコメントし、同商品は回収されて現在は製造・販売共に中止しています。
当初、まるか食品は「ゴキブリの混入は考えられない」という見解を出していましたが、1週間経過してから「製造過程での混入の可能性は否定できない」という判断を示し、最終的に製造中止を発表しました。
食品を製造する工場内にゴキブリが生息しているかどうかは「ごきぶりホイホイ」(アース製薬)のようなモニタリング装置を設置し、定期的に歩行性の昆虫の捕獲状況を確認、記録しておく必要があります。
そして、ゴキブリなどの虫が製品に混入していた場合、過去1年間のモニタリング装置の捕獲記録を公表すべきです。はじめから「ゴキブリ混入の可能性はない」と答えるのではなく、「当工場では、過去1年間において歩行性の昆虫は捕獲されていません」と言えるような用意をしておかなければならないのです。飲食店の厨房の場合も、従業員が「ゴキブリを見かけたことがない」と胸を張って答えられる環境が必要です。
●ゴキブリが侵入しない構造とは
そもそも、食品工場はゴキブリやねずみが侵入できないような構造になっていなければいけません。例えば、従業員の靴の裏に虫の卵がついたまま工場内に運び込まれることなどがないように、駐車場から入り口に至るまで、工場内の敷地は舗装されている必要があります。
従業員が履いてくる外靴と、工場内で使用する作業用の靴は、同じ場所で管理していてはいけません。外靴と近い距離に作業靴が保管されていると、工場内に虫の卵や異物が持ち込まれる可能性があるため、それぞれの下駄箱は適切な距離を保つことが必要です。外靴を脱いだら外靴専用の下駄箱に保管し、その後、少し歩いて作業靴用の下駄箱に行き、そこで作業靴に履き替えるという流れが理想的です。
資材などの搬入口や製品の出荷口は、虫やねずみが上がってこないように地面から1mほど高くなっているのがベストです。従業員の出入り口やボイラー室などにおいても、同様です。工場によっては、フォークリフトで資材などを搬入するために搬入口が地面と同じ高さになっている場合がありますが、それでは虫やねずみなどの侵入を防ぐことはできません。
●設備を設置する時の注意点とメンテナンス
狭い空間が好きなゴキブリは、壁とポスターの間にも巣をつくります。幅木に貼ったステンレスや壁材の割れた部分の隙間、冷蔵庫を設置した壁や床との隙間にも巣をつくり、卵を産み、繁殖します。
当然ですが、飲食店の厨房内には冷蔵庫などの設備があり、冷蔵庫と壁や床の隙間は食品残さと呼ばれる廃棄物で汚れています。そこで、十分に清掃する必要がありますが、冷蔵庫と壁や床の間に十分な空間が確保されていることが大切です。 冷蔵庫と床の間は15cm以上、冷蔵庫と壁の間は人が入ったり手を伸ばして清掃できるぐらいの隙間が必要です。十分な空間が確保できない場合は、簡単に動かせるように工夫して、定期的に移動して清掃するようにしましょう。
炊飯器、電子レンジ、冷蔵庫など、厨房で使用している設備は定期的に分解して掃除することも必要です。それらのドアやモーターに付着している食品残さを餌にして、ゴキブリは巣にしてしまうからです。冷蔵庫のドアのパネルの中にゴキブリが巣をつくり、厨房内がゴキブリだらけになってしまった事例もあります。
厨房内で使用していない設備でも、常に通電している電気製品は注意が必要です。パソコン、テレビ、DVDデッキなどは、最低でも年に一回は分解し、内部のほこり等を清掃しましょう。
●ゴキブリはどうやって侵入してくるか
新設された工場や飲食店の中に、ゴキブリはどのように侵入してくるのでしょうか。それには、3つの方法が考えられます。
1.地面を歩いて侵入してくる
2.空を飛んで窓から侵入してくる
3.使用する原料や従業員のかばんなどに卵がついて持ち込まれる
それぞれのケースを考えてみましょう。
1.地面を歩いて侵入してくる
玄関や搬入口が舗装されていて地面から1m以上高くなっていれば、歩行による侵入は防げます。また、工場の周辺は壁面から50cmほどは舗装されていることも必要です。
2.空を飛んで窓から侵入してくる
一般的に、気温が28℃以上になると、ゴキブリが空を飛びやすくなるといわれています。ただし、工場や飲食店の厨房には網戸などもあるでしょうし、ゴキブリが飛んで侵入してくるというのは、非常にまれなケースだと思います。
3.使用する原料や従業員のかばんなどに卵がついて持ち込まれる
新設工場のモニタリング装置に、ゴキブリが多数捕獲されている場合があります。新設工場に既存の工場から設備を移動する時に、設備内に残っているゴキブリの卵などが一緒に持ち込まれてしまうからです。同じように、パレットやコンテナ等を新設工場に搬入することで、ゴキブリの卵を持ち込んでしまうケースもあります。原材料に使用しているダンボール箱の隙間にゴキブリの卵が付着し、工場内に持ち込まれることもあります。では、どうすればいいのでしょうか。
「包装室」で包装資材を使用する場合、ダンボールごと持ち込むのではなく、中身だけ取り出して運びます。なぜなら、ダンボールは「包装材料搬入口」から持ち込まれて一度「包装材料庫」に置かれているからです。また、「包装室」で残った包装資材は、「包装材料庫」に戻さないで「使いかけの包装材料庫」に戻すべきです。
家庭のシーンを考えてみましょう。外に持ち出したかばんや荷物などを何気なく電車や会社、喫茶店の床などに置くことがあると思います。そこでかばんにゴキブリの卵が付着した場合、そのまま家の中に持ち込まれてしまいます。帰宅した時、靴は脱ぎますが、かばんの下面をふいてから家の中に持ち込む人は少ないでしょう。●ゴキブリを見かけたら、どうすべきか
ゴキブリはサルモネラや黄色ブドウ球菌など細菌の塊です。そして、食品残さがある家庭の台所や店舗の厨房に多く生息します。適温で保管していない食品の上をゴキブリが歩き、細菌が増殖するのに十分な時間がたった後にそれを食べてしまうと、食中毒が発生してしまいます。ゴキブリは衛生的にも心証的にも、飲食店や食品工場に生息していてはいけないものなのです。
一般的に、食品工場などでは防虫の専門業者による点検を毎月行っています。防虫業者は「ごきぶりホイホイ」のようなモニタリング装置を設置して、ゴキブリが捕獲されていれば、巣を駆除して発生を防ぎます。しかし、巣を発見するのは容易ではありません。
ゴキブリの糞を探し、尿のにおいをかぎ、巣を突き止めるには経験が必要です。多くの防虫業者は、巣を探すことをあきらめ、殺虫剤を厨房内に噴霧する対症療法を行ってしまいます。しかしそれは、風邪をひくたびに病院で薬をもらうだけで、生活習慣を改めるなど風邪をひきにくい体質にすることを怠っているようなものです。しかも、食品を扱う工場や厨房内で殺虫剤を使用するのは、安全性の面から見ても疑問が残ります。
ゴキブリを見かけたり、モニタリング装置に捕獲されていることを確認した場合は、厨房や工場の中を徹底的に清掃することが必要です。前述のとおり、壁に貼ったポスターの裏側はもちろん、積み重ねられたダンボール、新聞紙の束の中にも巣が作られるので、定期的に清掃します。また、ゴキブリの卵は孵化するまでに2週間程度かかるので、週に一度は清掃が必要になります。
新聞などの紙製品はゴキブリの餌になることもあります。厨房や工場内に新聞紙やダンボールは持ち込まず、発生したごみなどは1週間以上放置しないことが大切です。ゴキブリの生息が確認された食品工場や厨房では、殺虫剤を使用することなく、徹底した清掃で対応するべきです。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)
実質破たんした国内3位の航空会社スカイマーク再建の舵取り役の座をめぐって、ドタバタ劇が続いている。
中でも一番の話題は、ANAホールディングス(HD)の変節だ。いったんは提携交渉を時間切れにし、スカイマーク破たんの直接の引き金を引いたかたちにもかかわらず、ここへきて再び出資を含む再建のスポンサー役に名乗りをあげ、下馬評では最有力候補とされている。背景には、袂をわかったエアアジア(マレーシアの格安航空会社)が、日本再上陸を目指してスカイマークに食指を伸ばしてきたことがあるらしい。放っておけば転がり込んでくると高をくくっていた羽田空港発着枠というドル箱の行方に暗雲が漂い始めて、いても立ってもいられなくなったというのである。
しかし、すでにANAグループは羽田空港発着枠の過半数を抑えている。これ以上のシェア拡大は、日本の空の健全な競争環境を害して消費者の利益を損なう懸念が大きい。我々は、起ころうとしていることの本質を見極める目を養い、声をあげていく必要がありそうだ。
スカイマークは先月2月中に、同社の再建を支援するスポンサー企業の募集を締め切った。新聞やテレビの報道を総合すると、このスポンサーに旅行業エイチ・アイ・エス、航空機リースを営むオリックス、大和証券グループの投資会社、新生銀行、日本交通、福山通運など20社近い一般企業のほか、全日空を傘下に持つANA HDと日本国内への再参入を伺うマレーシアのエアアジアの航空2社が名乗りをあげた。
スポンサー企業には、投資、融資の両面からの資金支援だけでなく、営業面を中心にしたさまざまなサポートが期待されている。中でも重要なのが航空会社だ。弱体化が目立つ集客力を回復して売り上げを確保するためのコードシェア(共同運航)や、低コストでの機体整備などの支援が、スカイマーク再建には不可欠だからである。
そこで、名乗りをあげた航空2社に限ると、関係者の間には「両社とも選定される」という声もなくはないが、大方が「ANA HDが圧倒的に優位」とみている状況だ。エアアジアがLCC(格安航空会社)であり、国土交通省が羽田空港の発着枠をLCCに与えない方針を採ってきたことが、その理由である。
しかし、国交省がスカイマークに対し、日本航空(JAL)による単独支援に待ったをかけた昨年末に続き、今回もANA HDを再建のパートナーとするようゴリ押しするならば、忌々しきことと言わざるを得ない。
●すでにドル箱の過半数を抑えるANAグループ
ここでみておきたいのが、次に掲げたリストである。年間20~30億円を稼ぎ出すといわれる、羽田空港の国内線発着枠の航空各社保有数(1日当たり)を記したものだ。
・日本航空 184.5便(シェア39.7%)
・全日本空輸 173.5便(同37.3%)
・エア・ドゥ 23便(同4.9%)
・ソラシドエア(スカイネットアジア航空) 25便(同5.4%)
・スターフライヤー 23便(同4.9%)
・スカイマーク 36便(同7.7%)
個別会社ごとに見ると、依然としてトップの座はかつてのナショナルフラッグの名残りでJALが維持している。そのシェアは39.7%と、2位の全日空の37.3%をわずかながら抑えている。この単体のシェアだけに着目すれば、国策被救済会社JALの業容拡大を禁ずる行政指導「8.10ペーパー」(1月28日付本連載記事『スカイマーク、経営危機の元凶はJAL救済 根拠なき不当介入で市場歪める国交省と族議員』参照)を金科玉条として、国交省が昨年暮れにスカイマークのJALとの単独提携に待ったをかけたことや、今回もANA HDをスポンサーに選定するよう圧力をかけていることに理があるように見えるかもしれない。
しかし、それぞれのグループシェアに着目して実態を把握すると、まったく違った風景が見えて来る。ANA HDが出資をしたり社長を送り込んだりして経営に強い影響力を持つエア・ドゥ、ソラシドエア、スターフライヤーの3社のシェアを加えると、ANAグループのシェアは52.6%(1日当たり244.5便)と、すでにドル箱の過半数を抑えているからだ。
現在、策定が進められているスカイマーク再生計画で、ANA HDが再建スポンサーの座を射止めると、ANAグループのシェアはさらに上昇し、60.3%(1日当たり280.5便)に達することになる。日本の空を飛ぶ航空会社の中で、最後まで独立を保ち「第3極」と位置付けられていたスカイマークが、羽田空港の発着枠でガリバーの地位にあるANA HDの軍門に降れば、航空運賃をめぐる価格競争が損なわれ、ANAグループがプライスリーダーの地位を一段と強固なものとするのは明らかだろう。羽田発着便に限らず、随所で航空運賃は値上がりし、消費者の利益を損なう恐れがあるのだ。
●運賃値上げの兆候
そして、その兆候は早くも現れはじめている。ここで注目すべきは、スカイマークが撤退を決めたばかりの沖縄諸島を結ぶ路線だ。この地域の路線は、かつて新規参入したスカイマークが高止まりしていた運賃を劇的に引き下げたことで知られているが、今回は逆のことが起きようとしている。
2月10日付沖縄新報は社説で「4月以降、那覇-石垣線で当日から2日前の最低運賃(現在9900円)が2万1000~2万6000円と2倍以上になる可能性がある」と指摘した。実際、この路線ではANAグループが値上げの布石を打ったと映る動きがあった。3月末から始まる夏ダイヤで、那覇と石垣島を結ぶANA便を1日8往復から6往復に減便する一方で、新たにANA系のソラシド エアに那覇―石垣線(1日2往復)を就航させて、この2便をコードシェアするというものだ。ソラシド エアの運賃は搭乗3日前までに購入できる割引運賃で片道1万円と、スカイマークの同種の運賃(4000~6000円)はもちろん、ANAとJAL系のJTA(日本トランスオーシャン航空)のそれ(6900~7900円)も大きく上回る設定となっていた。
ここで、「ANAとJALの運賃は、新興航空会社のそれを下回ってはならない」という国交省ルールの存在が重要になってくる。まさかとは思うが、ANAもJAL系のJTAも国交省ルールを逆手にとって、スカイマークが撤退したら、ソラシド エアを上回る水準に運賃を変更する、つまり大幅値上げをするのではないかと取り沙汰されているのである。
こうした中でANA HDは、スカイマークを子会社化するわけではないので、競争環境には大した影響がないと強調したかったのかもしれない。全日空の篠辺修社長は2月26日付日本経済新聞の単独取材に応じ、スカイマーク支援について「経営権を取る立場ではない」と釈明した。
確かに、現行の国交省ルールの下では、ANA HDがスカイマークの発行済み株式の過半数を取得して経営権を握ることは難しい。というのは、国交省はANA HDやJALが新興航空会社に20%以上の出資をした場合、新興航空会社が持つ羽田空港の発着枠を強制的に返納させることにしているからだ。実は、このルールに従いANA HDは、エア・ドゥ、ソラシド エア、スターフライヤーの3社に対する出資比率をいずれも20%未満に抑えてきた。さらに国交省は水面下でANAグループに対して、「スカイマークへの出資は5年の期限付きで容認する」と釘を刺し、いずれは出資を引き揚げるように迫っているとの報道もある。
だが、航空業には、出資が一時的なものだとか、20%未満だからといって、事実上の経営権を握れないということにならない特殊性がある。というのは、「ANA HDの場合、コードシェアひとつで、提携先の首根っこを押さえてしまう仕組みを備えている」(元新興航空会社幹部)からである。同社のコードシェアは、提携先が同社のチケット発券システムを導入、売れ残り枚数をリアルタイムでカウントしながら両社が販売していく仕組みだ。
このやり方は、コードシェア比率を決めればチケットの実際の販売数とは関係なく代金を支払ってくれるJAL方式に比べて厳格な販売管理が可能な半面、導入に時間とカネがかかるデメリットがある。また、年間2億円前後といわれるシステム使用料に加えて、季節ごとのダイヤ改定や料金改正のたびにシステム改修の実費を支払うなど、コストもかさむ。何よりもひとたび導入すると、ANAの意向に異を唱えることは困難で、提携を解消するのも容易でない。それゆえ、経営の首根っこまで押さえられてしまうというのである。
●国交省、本末転倒の競争政策
国交省は、国策支援を受けたJALが業容を拡大し、航空行政批判が起きることを懸念しすぎたのだろう。JALとのコードシェアを軸にしたスカイマーク再建策に異を唱えた太田昭宏国土交通大臣の発言は、その象徴だ。背景には、「民主党政権の経済政策の成功モデル」という民主党のセールストークへの自公政権ならではの反発があったのも事実だろう。
しかし、国策救済会社の勢力拡大を恐れて、すでにドル箱の過半数を抑えている“独占企業”のシェア拡大を後押しするのは、競争政策の観点からすれば本末転倒であり、消費者利益を損なうことになりかねない。太田大臣は自らの発言によりスカイマーク経営破たんの引き金を引いたことの責任を痛感したのか、1月30日の記者会見で「第3極(として再生を果たすべきかどうか)ということではなくて、民事再生の中できちっと運航が行われて、利用者が回復をしていくということが、私は望ましいと思っております」と述べた。あれだけ拘泥していたスカイマークの「第3極勢力としての存続」にこだわらない姿勢を示し始めたことは、新たな気がかりといわざるを得ない。それでは、相変わらずスカイマークのANAグループ入りを後押ししているようにしか映らないのである。
国交省が本当に消費者利益の拡大を望み、「第3極」を存続させたいと考えるのならば、現代の黒船とでも呼ぶべきエアアジアの再登場を頭から否定するべきではない。むしろ、LCCへの羽田空港の発着枠の割り当て見合わせや、外資の本邦航空会社への出資を厳しく制限してきた規制体系を見直して、強い第3極の育成を後押しするほうが政策として筋が通るのではないだろうか。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
「いま北海道で何が起こっているのか」。道内のオモテもウラも知る元道警警部が、ディープな視点でモラルや治安が低下する北の大地の体制を憂う――。
●減ることがない警察不祥事
北海道で生まれ育ち、北海道警の捜査員として20年以上を過ごした私は、最近「北海道の質の低下」を感じない日はない。読者の皆さんは、北海道に対して、なんとなくのんびりしたイメージを持たれていると思う。確かにのんびりしているのだが、最近はそうもいっていられない事態が起こり始めているのだ。
JR北海道の事故の多発は報道の通りだし、農協改革に対するホクレン(ホクレン農業協同組合連合会)の悪あがきは見ていて悲しくすらなる。
さらにいえば、私の古巣である警察の不祥事である。これは道警だけではなく警察全体の問題ではあるのだが、日本の犯罪の件数は1955年をピークに減り続けているのに、警察不祥事だけは上昇傾向にある。2013年と14年は若干減ったが、それでも処分を受けた300人のうち、セクハラや盗撮などの「異性問題」が80人と最も多数を占める。
そんな中で警察不祥事の都道府県別では、北海道警28人がワースト3。それを上回るのは、警視庁が最多で46人、大阪府警37人だ。ただし、これら警察は職員の人数が多いからでもある(それにしても件数は多いが)。13年の不祥事を職員1000人あたりの人数に換算すると、岩手県警3.975人、鳥取県警3.458人、三重県警2.910人と多い順となっている。要するに、私の事件【編註:プロフィール欄参照】を含めて「過去の教訓」が生かされず、改革されていないということなのだと思う。
●遅すぎた警察の市民に対する警鐘
道警でいえば、こうした警察の体たらくとリンクして、昨秋からの危険ドラッグ騒動が拡大している。
道内では、薬物事件といえば、覚醒剤と大麻の検挙件数がほとんどで、危険ドラッグはそれほど問題になっていなかった。だが、14年9月に札幌市内で危険ドラッグ「ハートショット」を吸引した12人が交通事故を起こしたり、心肺停止になって救急搬送されたりする事件が相次いだ。
札幌中央署は「ハートショット」の害についてある程度は把握していたはずだが、動きは鈍かった。
もちろん捜査の実務の問題はある。薬物は専門機関で成分を分析するのに1カ月程度はかかってしまう。特に危険ドラッグは成分が一定しておらず、同じ「ハートショット」でも、12人に被害を与えたものが同一製品ではない可能性が高い。 しかし、厳密に成分がわからなくても、早い段階で「ハートショットらしきもの」を吸引した疑いのある人間がどのような症状になっているかを発表し、市民に「絶対に購入・使用しないように」と広報することくらいはできたはずだ。現場にあったドラッグのパッケージや販売店名を公表してもいい。そうすれば12人もの犠牲者を出さなくても済んだかもしれない。
昨年は危険ドラッグの使用によると思われる死者が112人に上ったが、まったく懲りていないようで、今でも手を出す人間がいる。北海道では、今年に入ってすでに逮捕者が出ている。登別市の道央道上り線を盗難車で逆走して逮捕された男は、自宅に危険ドラッグを所持していたとして麻薬取締法違反と医薬品医療機器法(旧薬事法)違反の容疑で再逮捕されている。
私がS(スパイ)として使っていた元ヤクザは、「危険ドラッグは品質が一定していないので、ヤクザは手を引き始めている」と話していたが、買い手がいる以上、売り手もいなくならないということだろう。また、取り締まりにより販売店は減ったが、ネット通販や直接届ける方式が増えている。
これに対して、道警は何の対策も講じていないどころか、新年早々、札幌東署の巡査が強制わいせつ容疑で逮捕されている。報道によれば、小樽市内の路上で1人で歩いていた高校2年の女子生徒を歩道脇の雪山に押し倒し、体を服の上から触るなどのわいせつな行為をしたという。こんな体たらくでは危険ドラッグを取り締まるどころではないと思うが、どうか。
全国的に警察官のワイセツ事件が増えているが、道警はワイセツ以外でも不祥事が多い(私の事件も含めて)。北海道という地域性と関係があるのかないのか、そんなことも考えながら、今後も検証していきたいと思っている。
(文=稲葉圭昭)