社会そのほか速
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学校給食では、食物アレルギーのある子どもたちへの対応が欠かせない。
2012年12月、東京都調布市の市立小学校で、給食で出されたチーズ入りチヂミを食べた女子児童が死亡した。女児には乳製品アレルギーがあった。
学校給食では1988年にも、札幌市でそばアレルギーの小学生が死亡する事故があった。その後、アレルギーを持つ子どものために食べられない食材を除去したり、食材を替えたりと個別対応をする学校が増えた。調布市の小学校でも、女児にチーズ抜きのチヂミを用意したが、お代わりを希望した際に担任がチーズ入りのものを渡していた。
事故後、市教委は対策を重ねてきた。間違いを防ぐため、アレルギー食品を取り除いた除去食と通常食をトレーの色で分けた上で、除去食にはチェック用のカードに担任がサインするようにした。お代わりは禁止した。一部の小学校の調理室に、アレルギー対応専用の調理スペースや器具を設置。緊急時には、専門医に直接連絡できるホットラインを設けた。
都教委は、緊急対応などの研修を増やし、昨年度は7回開いた。鈴木隆也・都教委健康教育担当課長は「担任に任せていては適切な対応がとれない。校内で役割分担を決め、準備しておきたい」と語る。
事故を受けて文部科学省が2013年に行った調査では、全公立小中高校の児童生徒の4.5%にあたる40万人余りが卵や牛乳、小麦などの食物にアレルギーがあった。04年の前回調査の1.2倍に上った。
各校では対応マニュアルの策定が進んでいる。
相模原市中央区の市立向陽小学校は3年前にマニュアルを作り、児童らの理解を得ながら、食物アレルギーのショック症状を和らげる自己注射薬「エピペン」を持つ子どものロッカーの外枠に緑色のビニールテープを貼っている。担任の教師が出張などで不在の時でも、迅速に対処するためだ。壁には、アレルギーを持つ子どもごとに食べてはいけないものが献立表に記されている。
当初は、保護者や教職員の間に「アレルギーの有無で子どもたちを区別すると、いじめを引き起こしかねない」との懸念もあった。だが、実際には、子どもたち同士で注意をし合うなど、互いの理解を深めることにつながったという。朝野秀典校長(56)は「子どもの命を守ることが第一。食物アレルギーは急に症状が出る場合もある。それぞれが自分の問題として考えることが大切」と話した。
食物アレルギー 卵や小麦など、特定の食べ物を食べたり、触ったりすると、免疫機能が過剰に反応して有害な症状が起きること。湿疹や目の充血、喉のかゆみ、息苦しさなど様々な症状が出る。血圧低下や意識障害を引き起こし、命を落とすこともある。
自治体が教員志望の学生らを対象に行う教師塾。その先駆けとなった東京都教委による「東京教師養成塾」は設置から10年を迎えた。
11月下旬、東京都教職員研修センターで、塾生約150人が好きな本を紹介する書評合戦「ビブリオバトル」に挑戦した。グループに分かれて本の魅力を説明し、一番読みたい本を決めた。東京学芸大4年、長尾春奈さん(21)は「話の組み立て方や伝え方が勉強になった。授業で取り入れれば、子どもたちの力がつきそう」と話した。
塾は実践的な教師力を育てる目的で、2004年4月に開設。大学4年生になった4月から翌年3月まで、週末に指導技術を学んだり、都内の小学校などで年間40日以上の教育実習を行ったりする。塾生は、5都県38大学の推薦を受けた学生のうち、筆記試験などで選抜された150人。今年度からこれまでの小学校コースに特別支援学校コースも加わった。
塾生は、夏の都内公立学校の教員採用試験で筆記試験を免除され、今年度の塾生のうち147人が面接に合格。来春採用されれば、受講料(18万7000円)も全額免除される。これまでの修了者の9割近くに上る約1200人が都内の小学校の教壇に立っている。
都教委は今年度、小学校教員を1104人採用し、競争倍率は4.5倍だった。教員の大量退職などで、採用者数は今後もしばらく1000人台で推移する予定で、倍率はピーク時の15.3倍(1996年度)より低くなる見込みだ。都教委の担当者は「優秀な教員を採用するために養成塾は必要」と話す。
教員生活10年目の1期生には、教員を育てる立場を目指す人も出てきた。杉並区立四宮小の主任教諭・菅野恭子さん(33)は今年度、都教委から教職大学院に派遣され、教員育成や学校運営を学んでいる。「養成塾で視野が広がり、実践力が培われた。子どもの可能性に気づき、その力を伸ばせるような教員を増やしたい」
教師塾は、都教委の開設後、全国に拡大した。「採用前の優秀な人材の囲い込み」との指摘もあるが、文部科学省は「地域の実情をふまえた質の高い人材を確保し、初任者の実践力を養うためにも有効な施策」とする。今後、各地の取り組みや効果を検証する考えだ。
文科省の調査によると、教師塾は昨年8月現在、全国67の都道府県・政令市教委のうち24教委が設置。東京都など10教委が、塾生について教員採用試験の一部を免除するなどの特別な選考を実施している。今年10月には茨城県教委も教師塾を始めた。「教育ルネサンス」では、教師塾による教員の囲い込み(2005年9月)や教師塾の工夫(09年1月)を紹介した。(桜木剛志)
今春開校した京都市立東山泉小中学校(東山区)では、6年生の授業時間が、学校教育法施行規則で示された小学生の標準(45分)より、1コマ当たり5分長い。
小学校6年、中学校3年の「6・3制」ではなく、「5・4制」の同校では、6年生は中学生(7~9年生)と同じく東学舎で学び、50分授業なのだ。コマ数は英語が多い以外標準通りで、授業は1年間で計約90時間長い計算になる。
開校前に作成した授業計画書(シラバス)では、6年生の各教科について「50分授業の工夫」という欄を設け、授業ごとに長くなった5分で、小テストや前回の振り返りなどを行うとした。だが、夏休みまでは徹底されていなかった。
転機になったのは、8月に発表された今年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果だった。6年生は国語、算数ともに基礎力を測るA問題が弱く、特に漢字の読み書き、分数の計算などで正答率が伸び悩んだ。
「長くなった授業時間を有効に使おう」。教員らで話し合い、基礎的な学力がつくように、シラバスにある工夫を意識して実施することにした。
11月中旬、6年2組の算数の授業では、担任の谷口真由教諭(34)が冒頭、問いかけた。「前回、何を学びましたか?」
児童たちは「方眼紙に半径10センチの円を描きました」「方眼紙の升目を数えて、だいたいの面積を出しました」と口々に答えた。ノートを開き、円の面積を調べた前回の学習を復習。その後、グループごとに、円の面積を求める公式を考えた。
谷口教諭は「最初の5分間で前回の学習内容を思い返し、今日学ぶ内容とのつながりを自ら考えられるようにした」と狙いを語り、「全員が授業に積極的に入っていけた」。
6年生の学習への意識は、中学生と同じように年間5回受ける定期試験でも変わった。
6年2組の畑中咲楽(さくら)さん(12)は「定期試験は小学校のテストと違って範囲が広い。直前だけでなく、日頃から勉強する習慣がついた」と話す。放課後、東学舎1階の自習用スペースを利用する6年生も増えてきた。
定期試験ごとに平均点は上昇傾向だ。6年4組担任の三木隆史教諭(40)は「テスト結果を見て、児童自身が自分の学力の現状に気づき、危機感を持った。小学校のテストに物足りなさを感じていた児童もやる気になった」。
中学生と同じ長い授業時間と定期試験。東学舎の今津敏一教頭(51)は「6年生は新しい学校生活に慣れつつある。中学校にスムーズに移行させていきたい」と力を込めた。
職員が抽選器の取っ手をぐるりと回すと、番号を記された球がこぼれ落ちた。
昨年10月、東京都杉並区役所で開かれた学校選択制の公開抽選会。同じ番号の紙を持つ「当選者」がほっとした表情を浮かべた。
区は2002年度、住んでいる学区に加え、隣接学区の小中学校を選べる選択制を導入したが、16年度入学生からの廃止を決定。選択制最後となる今回、学区外からの入学は1校あたり最大20人に限定し、区立小中64校のうち9校が抽選になった。
水島史子さん(38)は、新1年生になる長男(6)の就学先に、住んでいる学区の隣にある小学校を希望し、33人中20人の当選者に入った。小学4年生の長女(10)も保育園の時の友人の多くと一緒に同小で学ぶ。「友人関係を大事にしたかった。地元の学校しかダメというのではなく、それぞれの事情も考慮してほしい」
隣接学区の学校を希望した今春の新1年生は、小学校が15%の541人、中学校は24%の795人。「落選」した子どもは、居住する学区の学校に入学することになる。16年度以降は、志望理由を文書で提出し、区教委の審査で認められた場合などを除いて、居住学区外の学校に入学できない。
保護者らに根強い人気がある選択制だが、区教委が11年に小中学校の校長やPTA会長ら約200人を対象に実施した調査では、選択制の廃止や見直しを求める意見が7割を超えた。廃止を求める理由では、「地域とともに学校をつくるため」が最も多かった。
区は10年から全校で小中一貫教育に力を入れ、小学生が中学校で授業を受ける訪問授業や部活動の体験参加などを実施。今春には区内で初めて、施設一体型の小中一貫校・杉並和泉学園が誕生する。
小学校2校と統合されて同学園になる和泉中は、選択制導入前の01年度に301人だった生徒数が、現在は68人。全学年1クラスしかない。PTA会長の久保田知子さん(48)は「家の近くに学校があってこそ行き来が多くなり、関係が深まる」と今春以後の生徒数増加に期待する。
区内では新中学1年生の4割弱が私立や国立に行く。選択制導入前後でその割合は変わっていない。区教委の植田敏郎学務課長は「今後は、公立にしかできない、地域との連携を強め、小中一貫教育を進めたい」と語った。
次回は、選択制で生徒数が減少した学校の特色づくりをし、回復させた自治体を紹介する。
NHKEテレ(教育テレビ)の子ども向け番組「つくってあそぼ」で工作を教える「わくわくさん」役を1990年から23年間演じました。
ものをつくるのは子どもの頃から好きでした。プラモデルは無数に作った。高校生の時に作った零戦には、写真集を参考に操縦席を再現しました。番組では、子どもが「やってみたいな」と思えるような作り方をこころがけました。
本当は日本史の教師になりたかった。高校時代、担任だった木村肇先生にあこがれてね。でも大学4年の時、母校の高校での教育実習でくじけちゃった。
生徒は言うこと聞かない、叱っても静まらない。授業をやる前提すら作れなかった。「ああ、俺駄目だ」と自信をなくしました。実習の少し前、面白半分で応募した劇団に受かっていました。演じることが面白くなっていたこともあり、役者の道に進みました。
木村先生は、生徒をよく見ていてくれる先生でした。2年生の時の学園祭。映画を作ったんですが、クラス全員に相談しながら進めなければいけないのに、一部の仲間だけで、作ってしまった。学校をさぼって友人の家で編集していたら、先生が来て、「お前たちだけのものじゃないだろ」と怒られました。その後、先生がほかの生徒にうまく説明してくれ、なんとか丸くおさまりました。
人にものを教える、伝えるという意味で、教師に近い仕事をしているかなと思っています。番組は終わりましたが、各地で工作教室をしています。「継続は力なり」。木村先生にもよく言われました。これからも工作の魅力を伝えていきたいと思います。(聞き手・名倉透浩)
(2014年8月28日付読売新聞朝刊掲載)